IFRS対応の問題は、親会社のみの問題ではない。IFRSは連結財務諸表に関する財務報告基準であることから連結子会社もその影響を逃れることはできない。
各部門別論点や主要会計基準に関する論点は本社と比べて網羅的ではないが、各種取り組みが必要だ。会計基準以外の側面でも影響があり得る。IFRSの採用に際して、社内の管理会計のルールの変更が行われたり、経理業務の実施体制やシステムがグループ全体で見直されるケースもある。
まずは、根幹となるIFRSベースのグループ会計基準の作成に際しても連結子会社として本社の検討チームへのアドバイスや参画が求められる。さらに、作成されたグループ会計基準に対応して新たに定義された数値を収集、算定するために連結子会社内の各部門の協力をあおぎながら業務プロセスの変更やシステムの改造を期日までに完了する必要がある。
今回は、連結子会社がIFRSに際して影響を受けると想定される大きなポイントを議論していく。この記事を子会社が親会社でのIFRS対応の取り組みに効果的かつ効率的に対処できる準備のヒントとしていただきたい。
新たに「連結子会社」になる会社も
決算の変更にどう対応すべきか
1.連結範囲上のポイント
<新たな連結対象子会社>
IFRSを採用することにより、日本基準上は連結の範囲に入っていなかった子会社が新たに連結子会社になる場合がある。新たに連結子会社になった場合には、以下の点に留意することが必要となる。
1)IFRSベースのグループ会計基準への準拠
IFRS採用の親会社の連結対象子会社となると、IFRSに基づいたグループ会計基準で経理処理を行うことが求められる。日本企業の子会社でこれまで連結対象ではなかった場合、基本的には現地の会社法や税法に基づく会計基準で会計処理を行い、本社が求める特定の数値(売上高や原価等)のみ必要に応じた修正を施した上で報告している場合が多いのではないであろうか。
しかし、連結子会社となり連結パッケージを決算期ごとに迅速に本社に送付することが求められるようになると、少なくとも決算期ごとにグループ会計基準に準拠した会計数値を作成し、それに基づく各種情報を連結パッケージに記載することが必要となる。