R&D(研究開発)部門は、その活動と活動の成果が数値として見えやすくなるまでの期間が長期間にわたり、またその確実性が不明確なことから、会計の世界では「期間費用」として取り扱われてきた。一方、研究開発促進の観点において研究開発費への税務上の優遇措置を積極的に活用する目的からも、期間費用処理が行われてきた側面もある。
その結果として、経営管理的にも、生産部門や販売部門で求められるレベルでの精緻な数値管理(生産部門における製品原価計算や販売部門での商品別の売上や利益管理等)は要求されることが少なく、精緻な管理制度を導入している企業も限られてきた。
しかし、グローバル競争が激しくなるに従い、研究開発の活動の重要性は益々高まってきている。自社の研究開発活動の効率化の要請やその成果の外部への開示を適時に行っていく必要性も課題となっている。
IFRSによる、研究開発費の会計基準は、このような直近の課題解決を支援する会計制度となる可能性を秘めている。
「無形固定資産」として計上も
IFRSにおける研究開発費の会計処理
IFRSでは、研究開発費については、自己創設した無形固定資産の一部として考えられる。
研究局面に関しては、発生した支出はすべて費用処理することになる。一方、開発局面では、以下の一定の要件をすべて満たす場合には、無形資産として認識することが求められる(費用処理との選択ではない)。
“開発費の無形資産としての要件”
(1)無形資産を完成し使用または売却することが技術的に可能である。
(2)無形資産を完成し使用または売却する意思がある。
(3)無形資産を完成し使用または売却する能力がある。
(4)無形資産が将来において経済的便益を生み出すことを示すことができる。
(5)無形資産を完成するための技術上、財務上、その他の資源を有している。
(6)無形資産を完成する開発時の支出を信頼性を持って測定する能力がある。
上記の要件に合致して、一旦認識された無形固定資産としての開発費は、当該開発がもたらす将来の経済的便益の費消パターンと期間に応じて償却することが求められる。なお、各会計期間末には、その償却方法の見直しも求められる。