内部監査部門は、数年前に導入されたJ-SOXの影響により、その業務範囲が大きく広がった。

 伝統的な日本企業の内部監査部門は、コンプライアンスに重点をおき、会計面でも会社法会計および税務会計によりフォーカスした内部監査を行ってきたところが多い。しかしながらJ-SOXの導入により、財務報告の適正性を確保するための内部統制の整備状況をモニターする役割が内部監査部門に課されることになり、内部監査部門に期待される業務や関連する能力も大きく拡大した。

 さらにIFRSの導入が、その業務に占める財務報告プロセス関連監査の比重が大きい現在の内部監査部門に対して様々な影響を与えることが想定されている。

 今回は、これらの影響を、J-SOX、業務監査、および組織体制の3つの視点から議論してみたい。

J-SOXの観点からみた内部監査部門への影響

“新たな会計処理プロセス”
ご存知のように、日本の財務会計制度としてIFRSが採用されることにより、会計処理方法や当該会計処理に必要な情報を作成するための現場業務プロセスやシステムの変更が必要なケースがでてくる。このような変更が必要になる場合には、内部統制を所管する部門として、新たに設計する業務プロセスに適切な内部統制が設計・導入されるように経理部門や現場部門を指導/監督すべきである。

 また、当該の新たな業務やシステムおよび内部統制が整備されたならば、当該新業務プロセス等に関する内部統制関連文書を更新するとともに、新たな内部統制を如何にテストすべきかを検討しておき、新プロセスが施行される前にトライアル等も実施することを検討すべきである。

“原則主義とグループ会計基準”
また、原則主義を採用しているIFRS特有の留意点もある。IFRSは原則主義を採用しているため、個々の経済事象の会計処理方法を決定するに際してIFRSの基準を各企業や担当者が理解して、また対象となる経済事象の実態を把握した上で、個々の判断を行うことが求められる。

 ただ、企業グループの中でこのような判断の品質を一定以上に担保することは大きな課題である。そこで、判断の必要となるケースを極力最小化し、グループ全体の財務会計の品質を担保できるようにする手段の1つがグループ会計基準の制定である。グループ会計基準を周知させることにより、グループ内で共通する各種会計事象に関する会計処理方法を統一することができる。実際、IFRSの導入に備えて多くの企業がグループ会計基準の策定を準備している。