「子宮全摘の手術は、受けるべきではありません。少なくとも、私は妻には受けさせません。あまり語られませんが、開腹手術の身体に対する負担は決して軽いものではありません。無論、以前と比べたら、かなり安全になりましたし、命に関わる様な合併症は滅多に起きません。

 しかし、術後の傷痕は生涯残りますし、傷痕のかゆみや、引きつり感はあります。術後の癒着により、排尿痛、便秘などの症状を訴える方もおられます。

 その他、腸閉塞、創部離開、術後出血、感染症、痛み、発熱等々を起こす可能性もゼロではありません。どうか主治医の先生から、そのあたりのリスクについても、しっかりとご説明を受けてください。

 私としては、どうしても手術が必要な場合には、侵襲性の低い、腹腔鏡下の手術をお勧めいたします。筋腫を小さくさせる収束超音波治療(FUS)、子宮動脈塞栓法(UAE)といった新しい治療法もあります。人工的に閉経状態にする薬物療法や、体質を改善する漢方薬もぜひお試しください。筋腫に伴う過多月経を治療するだけなら、マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)という方法もあります。ご検討ください。」

 またペインクリニックの医師も言う。

「ひどい下腹部痛と腰痛の原因は子宮筋腫だと診断され、全摘手術を受けたけど、痛みはぜんぜん治まらなかったという患者さんがよく来ます。誤診ですよ。痛みの原因は複雑です。安易な臓器摘出手術は絶対に避けるべきです」

子宮全摘手術は
「性感帯」も取り去る?

 さらに千尋さんは、以下のような「重要情報」も入手した。

「子宮全摘をしても、セックスには影響しないって言われているけど、ヨーロッパでは、違うんですって。子宮頸部(出口の部分)には、ポルチオ性感帯というのがあって、これを取ってしまうと、残念なことになるそうよ。だからヨーロッパでは、子宮頸部を残すようにするケースが結構あるらしいわ。でも日本では、そうした選択肢はないみたい」

 この情報、真贋は定かではないが、似たような話では昨今、胃の上部に食欲に関連する部分があることが判明し、胃を切除する場合には、その部分を極力残すようにする手術が行われるようになった…というのもある。

 そんなわけで、夫婦して情報収集と検討を重ねた結果、千尋さんは今回の子宮全摘手術は受けないと決めた。

 代わりによく話を聞いてくれる女性医師が開業している「女性外来」に通い、相談しながら最適な治療法を探すことにした。

「今回の件で、夫が一緒に怒ってくれて、真剣に情報収集してくれたことに感謝しています。中年を過ぎると、夫婦とも、いろいろな病気が出てきますよね。いずれ彼に、前立腺肥大症とか、男性独特の病気が見つかった場合には、私が東西奔走して助けてあげたいと思っています」

 夫婦の愛情を再確認する千尋さんだった。