――そこに手を差し伸べてくれたのが、トランプだったと。

 これまでの政治家は4年に一度地元に来て、地元経済の活性化を謳っていくけれども、4年後にはそうなっていない。選挙のためのきれいごとだけで、本音ではつきあってくれてないという不信感は強かった。トランプ氏は問題発言はするけれど、計算づくならあんなことを言うはずはない。きっとあれは彼の本音で、自分たちのために何かをやってくれるに違いない。トランプ氏は国民にそう感じさせたのでしょう。

 メディアは「トランプはダメだ」と言い続けましたが、白人の中間層にとっては、メディアこそが自分たちを騙してきた張本人で、彼らの言うことのほうがおかしいと感じていたはずです。それよりも、自分たちに初めて本音で話してくれたトランプ氏を信じたいという気持ちがあった。直感なのか計算なのかはわかりませんが、まさにそうした国民の疎外感を敏感に嗅ぎとったのが、トランプ氏だったのです。

「トランプだから大変」では見誤る
実は世界に求められる政策もある

――来年1月には正式にトランプ政権が発足します。軍の経験も政治の経験もないトランプ大統領の政権運営に不安はないでしょうか。

 よい意味でも悪い意味でも不透明と言えます。まずトランプ政権のメリットは、過去のしがらみがないため、柔軟に政策を選べることです。従来の政治家は公約に縛られるので、大統領就任後にポリシーを変えるのは大変なことだった。それに対してトランプ氏はビジネスマンであり、「何事もディール(取引)である」として、その時々で最善の選択をすることを公言してきました。よって、途中で政治方針を変えてもダメージになりにくいのです。ただ、ビジネスマンとして成功した経験が、政治家として国のリーダーシップをとる際にどれだけ生かされるかは未知数です。

 一方デメリットは、もともと一本筋が通った政策ポリシーがないので、いい方向に進むのか、悪い方向に進むのかがわからないこと。公約を見ると、米国の経済・景気にとってプラスに作用するものとマイナスに作用するものがあります。大型減税、インフラ投資、規制緩和などは景気に対してプラスに作用しますが、保護主義、移民に対する厳格な政策などはマイナスに作用します。その時々の状況によって、「よいトランプ」が出て来るのか「悪いトランプ」が出てくるかが違ってくるはずです。

 ただ1つ言えるのは、「トランプ大統領だから大変なことになるだろう」という先入観が強すぎると、状況を見誤る可能性があることです。たとえば、「財政拡張をするから国の赤字が膨らんで大変だ」と言う声がある一方、世界的な需要不足のなかでどの国もなかなか打ち出せない大規模な投資を断行することは、世界経済の追い風になるため、「彼の政策はまさに世界に求められている」とも言えるからです。