パワーゲームの理論で考えれば、米国はロシアよりずっと力がある国なので、ロシアに譲歩する必然性が薄いからです。そもそも共和党の外交筋にとって、ロシアは不倶戴天の敵。また米国の再建に力を入れたいトランプ氏が、そこまでロシアに力を注ぐことも考えにくい。あるとすれば、中東・シリア問題のからみで、ロシアとの関係改善を図ることでしょう。

 一方、米中関係は微妙なバランスになるでしょう。米国が日米安保に以前ほど思い入れを持たなくなれば、彼らは領土面で動きやすくなります。ただ経済面については、これまで米国は人民元安の是正などについて中国に口を出してきた経緯もあり、今後も強く出る可能性はあります。

 とはいえ、中国との関係がぎくしゃくすれば、米国経済にとってマイナスです。オバマ政権は政治的な理由で中国を批判しなくてはいけないときも、互いの利益を犯さない範囲でそれを行なうという「暗黙の了解」を心得ていました。トランプ政権と中国はそうした関係を構築できるかどうか。もし政権内で対中強硬論が起きれば、米中双方にとって危うい状況になるでしょう。

 このように、中国とロシアとは米国にとっての意味合いが全く違うのです。

ポピュリズムを理解しないと
グローバリゼーションは進められない

――米国における大不況後の格差社会化、保護主義の台頭という現状を、戦前の世界の状況になぞらえて論じる向きもあるようです。トランプ政権の登場は、不透明化する世界情勢を象徴しているようにも見えますね。

 低成長と格差拡大のなかでグローバル化を推し進めなければいけない米国には、政策的に手詰まり感があり、最適解がないため、内向きになってしまいがちです。ただ、トランプ氏のような存在をポピュリズムと評して「けしからん」と言うのは違うと思います。少なくとも今回の大統領選は、疎外された人々の不満をどう解消するかという問題意識を政治に持たせるきっかけになりました。人々の声を表に押し出し、トランプ政権を誕生させたのは、ある意味、米国の政治の「強さ」と言えないでしょうか。

 ポピュリズムは封じ込めるものではなく、理解すべきものという価値観の転換も必要です。もしかしたら、世界はグローバル化の動きを少し緩める必要があるかもしれない。ポピュリズムを理解できなければグローバリゼーションを進められないということを真剣に考えないと、今回の大統領選の教訓は、わからないと思います。