避けられないシャロー・ワークを
見きわめる

 しかし、戦略の詳細に入る前に、シャロー・ワーク削減にも限界があることに向き合わねばならない。ディープ・ワークの価値はシャロー・ワークのそれを大きく上回るが、それは“全”時間をディープ・ワークに注ぎ込まねばならないということではない。

 一つには、ごくわずかながらシャロー・ワークも大半の知的職業に必要である。10分ごとにメールをチェックする必要はないかもしれないが、重要なメッセージに返事をしなければ長く存続することはできないだろう。その意味で、この戦略の目標を、スケジュール中のシャロー・ワークの部分を排除するのではなく、コントロールすることだとみなすべきである。

 それから、認識能力の問題がある。ディープ・ワークはあなたを能力の限界へと追いやり疲れはてさせる。パフォーマンス心理学者は、個人は1日にどれほどの努力を持続させることができるかを大規模に研究してきた。彼らの「意図的な練習」に関する独創性に富んだ論文で、アンダース・エリクソンと協力者たちはこの研究を概観している。それによると、そうした実践に不慣れな人は、1日1時間が妥当な限界だ。その厳しさに慣れている人の場合は、限界は4時間くらいまで延びる。

 おそらく、限界を超えてやろうとすると、効果が薄れるだろう。したがって、シャロー・ワークは、ディープ・ワークが限界に達するまでは危険にはならない。最初、この警告は楽観的に思えるかもしれない。標準的な勤務時間は1日8時間。深くものを考える人の大半は、真のディープ・ワークを4時間以上つづけることはできない。悪影響なしに半日はシャロー・ワークにふけることができるということだ。

 しかし、これくらいの時間は「容易に」消費できてしまうという危険はある。とりわけ、会議、人と会う約束、電話、そのほか予定の行事を考慮した場合は。

 最後に、シャロー・ワークに疑念をもって対応してほしい。その損害は著しく見くびられ、重要性は著しく買いかぶられることが多いからだ。シャロー・ワークは避けられないが、最終的にあなたの影響力を決定するディープ・ワークを十分に生かすことができるよう、シャロー・ワークは制限しなければならない。本書で紹介する戦略は、その一助となるだろう。