まるまる1ヵ月ディープ・ワークのために
会社を休みにする!
フライドは、グーグルのような、従業員に20パーセントの時間を自主的なプロジェクトに充てさせる技術系企業に常に関心を寄せていた。その一方で、彼は真の飛躍的進歩を生み出すディープ・ワークのためには週の1日を削るだけでは十分ではないと思った。
「私なら5日取るね、5週にわたって週に5日間。われわれの理論は、長く連続した時間が取れればよりよい結果が得られるというものなのだ」
この理論をテストするため、37シグナルズは過激な策を実施した。従業員が自分のプロジェクトに徹底して取り組めるよう“6月まるまる1ヵ月”を休みにしたのだ。この月は、いっさいシャロー・ワークなしだ――状況確認会議なし、メモなし、パワーポイントもなし。月末、会社は従業員が取り組んできたアイデアをプレゼンする「ピッチデー」を開催した。
『インク』誌の記事で、フライドはこの試みを成功だとした。ピッチデーでは、まもなく実現するプロジェクトが2つ生まれた。顧客のサポートをおこなうよりよいツールと、顧客の製品の使用実態を把握するためのデータ視覚化システムだ。
これらのプロジェクトは相当な価値をもたらすと見込まれるが、従業員に遮るもののないディープ・ワークの時間が与えられなければ、ほぼ間違いなく実現されなかっただろう。
37シグナルズの試みは、重要な現実を浮き彫りにする。知的労働者の時間と注意力をしだいに支配するようになるシャロー・ワークは、その時に思うほど重要ではない。大半のビジネスで、多くのシャロー・ワークを排除しても、純利益には響かないだろう。
そして、ジェイソン・フライドが発見したように、シャロー・ワークを排除するだけでなく、回収した時間をより多くのディープ・ワークに充てても、ビジネスに支障はないだろう。「より」うまくいく可能性もある。
あなたはこのことを自分の仕事にあてはめてみる必要がある。本書『大事なことに集中する』の第7章に挙げる5つの戦略は、スケジュールの中のシャロー・ワークを情け容赦なく見きわめ、最低限まで削減するためのものだ。