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ホテルといえば、富裕層は迷わず最上階のスイートルームを取る――多くの方はそんなイメージをお持ちかもしれません。けれど、私が執事として実際にお仕えしてきた“本物の富裕層”の方々は、むしろスイートを避けて、別の部屋を選ばれます。
「最も高価な部屋」がなぜ彼らに選ばれないのか。執事として何度も目にしてきたこの不思議な選び方の背景を、お話ししたいと思います。(日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役社長 新井直之)
そもそもスイートルームは
「宿泊するための部屋」ではない
スイートルームとは、もともと何のための部屋なのでしょうか。
意外と知られていませんが、ホスピタリティー業界では、スイートは「お客様をお迎えして、もてなすための部屋」として設計されています。広いリビング、ダイニング、ときには書斎――そこにはおおむね十人ほどが集える広さが確保されています。
ここで人を招いてのパーティーを開き、ビジネスの打ち合わせを行い、自宅の延長として来客にお茶や食事を振る舞う。そして、全てを終えたあとでそのまま寝泊まりもできる、というのが、本来のスイートの機能なのです。
言い換えれば、スイートは「ひと晩を過ごすための部屋」ではなく、「来客対応と宿泊が一体になった、もてなしの空間」です。一人や夫婦二人で、ただ静かに泊まるだけのお客様にとっては、機能的にはかなりの過剰スペックになります。広い空間は、必ずしも快適な睡眠や心の落ち着きを生まないのです。
このようなそもそもの目的に応じた選択に加えて、本物の富裕層がスイートを避けるのには、もう一つ、見落とされがちな理由があります。







