ビジネスパーソンはメール返信を迅速にしなければ、顧客や信用を失ってしまうだろうか?カル・ニューポート著『大事なことに集中する』から、ボストン・コンサルティンググループで実施された「ネット接続を1日禁じる」という試みを紹介する。

メールをすぐ読み、すぐ返信しなければならない
“接続性の文化”

 職場における気を散らせる行動となると、現在誰もがいつでもどこからでも情報ネットワークにアクセスできる“接続性の文化”が支配的で、人は速やかにメールを読み、返信することが求められている。

 ハーバード・ビジネススクール教授、レスリー・パーローによれば、彼女が調査した知的労働者たちは“オフィス以外で”メールをチェックすることに週20時間から25時間ほど費やしており、メールを受け取って1時間以内に返答することが重要だと考えていたという。

 こうした行動はペースの速い多くのビジネスでは必要だと、あなたは言うかもしれない。しかし、次のような興味深い例がある。パーローは、接続性の文化が染みついている大手経営コンサルティング会社、ボストン・コンサルティンググループの経営幹部を説得して、あるチームの業務習慣を吟味させてもらうことにした。

 常時、ネットでつながっていることが本当に仕事に役立っているかをテストしたのだ。そこで、チームの全員に1週間のうちのウィークデーの1日、完全にネット接続を休み、社内外の誰とも連絡を取らないようにさせた。

「最初、みんな実験に反対しました」と彼女は言う。「責任者は基本的な考えに賛成してくれていたのに、急に苛立ち、1日休みを取ることをクライアントに伝えなければならないと言い出したのです」。コンサルタントたちもあわてた様子で、キャリアが「危うくなる」と心配した。