昨年までの爆買いブームは沈静化したが、中国人観光客数は、実はまだ伸びている。買い物熱は下火になったが、代わりに日本人が不思議に思うような場所が彼らの観光スポットになっているのだ。

ゴミ処理場が
人気スポットになった理由

 池袋駅から徒歩わずか5分の場所にある豊島清掃工場。空にそびえる白い煙突は、高さ210メートルもある。ここでは毎週月曜日と設備の修理・整備日を除く日に、団体見学を受け入れており、中国人が大勢訪れる観光スポットになっている。

買い物は越境ECで済ませ、日本各地の観光スポットへ足を運ぶ――訪日中国人の動向は、この1年で劇的に変化した。「なぜここに?」と日本人が不思議がるような場所に中国人が押し寄せるのにも、ちゃんと理由がある(写真はイメージです)

 わざわざ日本に来てゴミ処理場見学とは不思議だが、発端はある中国人のSNSへの投稿だった。「こんなにキレイで、煙も出ないゴミ処理場はすごい」――写真付きの投稿が中国人たちの間で広まり、人気スポットになったというわけだ。

 ほかにも、漫画「スラムダンク」の主人公たちが通う高校のモデルとなった鎌倉高校(神奈川県)や、富士北麓に位置し、富士山の伏流水を水源とした湧水地となっている忍野八海(山梨県)など、日本人の感覚では「こんなところに!?」というような場所が、爆買いスポットに代わる人気観光地になっている。

 忍野村観光協会によると、中国人観光客が増えはじめたのは、富士山が世界遺産に登録された2013年頃から。観光客が増えるのはいいのだが、関係者が困っているのは、池にコインを投じる中国人客が多いことだ。どうやら「池にコインを投げると幸せになる」と言われているようだが、むろん「忍野村発の情報ではありません」(忍野村観光協会)。中国人の間で、いつの頃からか言われ始めた“伝説”なのだ。

 忍野村は「コインを投げないで」と書かれた看板を設置したほか、ビラを案内所に置いたり、池の中のコインを清掃したりと、対応に追われている。「観光客が増えることを喜ぶ人もいる一方、やはりこうした迷惑行為を嫌う住人もいますから…」(同)。“人気観光地化”に対する思いは複雑なようだ。