後発から業界5位と大手の一角に食い込み、近年プラウドシリーズのマンション事業で業界をリードする野村不動産ホールディングス。じつは顧客から資産を預かり、それを不動産で運用する資産運用ビジネスで地歩を占めているのはあまり知られていない。成長を託す資産運用事業の実情と課題に迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

 2010年11月、10年間のJリートの歴史で“初”となる、ある不動産投資信託が産声を上げた。

 住宅・オフィスなどを運用する総額400億円の「野村不動産プライベート投資法人」がそれだ。

 通常、Jリートは証券取引所に上場し市場で取引される。これは日本で初の「非上場リート」だ。投資家の3分の1を占めるのが、企業年金の運用を担う年金基金。「投機的な価格変動を避け、不動産本来の安定的なリターンが得られる商品が欲しいという、投資家の求めに応じ作った」(緒方敦・野村不動産投信社長)という。

 リートや私募ファンドの組成は、他の不動産会社でも行っている。だが、野村不動産ホールディングスは年金などの特定の投資家の要望に合わせて作ったいわば“セミオーダーメード”に近い証券化商品を多数持ち、販売している。

 たとえば、海外の複数の不動産私募ファンドに分散投資を行う海外不動産ファンド・オブ・ファンズ、不動産保有SPC(特別目的会社)に対し、リスクの低いローン部分を証券化したシニアローンデットなど、日本では不動産会社はおろか証券会社でも組成例がない商品も多数ある。

 年金投資家は「最も“堅く、厳しい”投資家。投資方針や顧問会社の姿勢に十二分に納得できなければ動かない」(金融関係者)といわれるが、野村不動産はこの“難しい顧客”と、歴史的に付き合いが長い。

 1997年には、米年金の資金を元に、オーストラリアで不動産証券化事業を行った。06年には、資金を一括で預かり、顧客の代わりに運用を行う「投資一任業務」の認可を取得。これは、06年当時、年金の資金を運用するためには不可欠な免許だった。不動産会社でこれを取得したのは野村不動産が初めてである。

 日本証券投資顧問業協会によると、野村不動産投資顧問が年金基金と結んだ投資一任勘定の契約件数は計16件、残高は413億円で、他の不動産系の投資顧問会社を大きく上回る。