12月15、16日の2日間、安倍晋三首相は、ロシアのプーチン大統領との日露首脳会談を行った。北方領土問題については、日露双方の法的立場を害さない形の検討による「共同経済活動」の実現に向けて交渉を開始することで合意した。また、高齢化している北方四島の元島民の墓参など自由訪問の拡充に関し、現行手続きの簡素化を検討することになった。しかし、4島の帰属問題では進展がなかった。
「新しいアプローチ」は失敗ではない
日露「負け犬連合」は弱みを相互補完すべき
安倍・プーチン両首脳は、北方四島の共同経済活動に加えて、日露両政府が調整を続けてきた「8項目の経済協力」について、民間を含めた80件の案件の具体化で合意した。日本側の経済協力の総額は3000億円規模となる見込みだ。しかし、経済協力ばかりが進み、領土問題は置き去りの印象は拭えない。安倍首相が提唱していた「新しいアプローチ」は、そもそも失敗だったという批判が出ている。
しかし、この連載では「新しいアプローチ」は失敗ではなく、むしろ取り組むのが遅すぎたと、繰り返し主張してきた(前連載第18回)。ロシアは極東開発について、長い間日本の協力を望んできたからだ。
ロシアは、極東開発に関して、中国とのシベリア・パイプラインによる天然ガス輸出の契約を結び、関係を深めてきた。しかし、シベリアでの中国との協力は、ロシアにとって「両刃の剣」である。シベリアは豊富なエネルギー資源を有する一方で、産業が発達していない。なにより人口が少ない。
そこへ、中国から政府高官、役人、工業の技術者だけでなく、掃除婦のような単純労働者まで「人海戦術」のような形でどんどん人が入ってくる。そして、シベリアが「チャイナタウン化」する。いわば、中国にシベリアを「実効支配」されてしまうことになる。ロシアはこれを非常に恐れているのだ(本連載第84回)。