日本で一番、生活保護受給者比率の高い町、大阪市西成区のあいりん地区から目と鼻の先には、昔ながらの遊郭の面影を残す飛田新地がある。街並みの写真撮影すらNG、徹底したルール運営がなされる飛田新地とは、どんな場所なのだろうか?(取材・撮影/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
「嘆きの壁」の内側には
別世界が広がっていた
異世界――最後の色街と言われる「飛田新地」を一言で表すとすれば、この言葉しか見当たらない。
大阪のオフィス街・梅田から市営地下鉄御堂筋線・なかもず方面に乗ること約13分、6駅目の「動物園前」駅で下車。飛田本通商店街を南下、アーケードの終点まで歩くと、厳めしい門扉跡と交番へと行き着く。ここはかつての遊郭時代、飛田の「内」と「外」を繋ぐ唯一の場だった“大門(おおもん)”があったところである。
労働者の街「西成・あいりん地区」からは目と鼻の先、徒歩3分ほどの距離だ。ちなみに、大阪の新名所「あべのハルカス」からも、大人の足で歩けば約15分ほどで着く。
この「大門跡」から足を一歩内側に踏み入れたそこからが、飛田新地だ。メインストリートである「大門通り」を見渡せば、その突き当りには高い壁が聳え立っている。「嘆きの壁」と呼ばれるそれは、その昔、遊女たちが「外」へ逃げないように設けられたものだということは、その名からも察しがつくところだろう。
今、この「嘆きの壁」を境として壁の内側が大阪市西成区、外側が阿倍野区となっている。外と内をつなぐ階段を上った場所にいた、阿倍野区に住む小学生の子を持つ地域住民女性(30代)はこう語る。
「この階段を降りたそこは別世界です――子どもには決して階段から下へ降りないように言っています。同じ女性として、(飛田新地で)働いている方へのせめてもの配慮です」