マル暴刑事と
暴力団との日常
私がマル暴の刑事だった頃、暴力団事務所を訪れると、電話番の若いのや、少年っぽさが残るダークスーツのティーンエイジャーや、アスレチックウエアのヤンキー風などが、「チェッ、またデコスケが来やがった」といった表情で「空っ茶(出がらしの茶)」を淹れてきたものだ。
鬼瓦オヤジのデカ長と私の2人分の茶を面倒くさそうに淹れて、来客用のテーブルに置く。
それでも、テーブル上に茶をこぼしたり、デカ長が座る席に脚が触れるような粗相は許されない。そんなことが起きようものなら、事務所で中堅の「兄貴分」が、こちらに聞こえるように、「てめえ、何やってんだ。この野郎!」の怒声を浴びせかけ、「私らは警察には畏敬の念を持ち、細心の注意を払っています」と暗に訴えてくる。