過去の事例として、出所直後に刑務所からいちばん近いコンビニで強姦事件を犯した人がいると聞いています。彼は受刑中から「シャバに出たら仕事も家族もいないし再犯するしかないか」と考えていたそうです。孤立しているから、犯罪を犯してもいいわけはありません。でも彼が社会に接続し更生の手段を知っていたら、防げた事件かもしれないんです。だから私たちは社会のなかでの受け皿として再犯防止プログラムを行っているわけですが、法的強制力がないので継続するのはごく一部の人だけです。

高橋 刑務所内のプログラムを見直そうという動きはないんですか?

斉藤 それが今のところないんです。性犯罪の再犯防止プログラムが導入されたのは、2004年に発生した奈良小1女児殺害事件がきっかけでした。犯人の小林薫は2013年に死刑が執行されましたが、この事件以前にも子どもに対する性犯罪をくり返していました。

 その意味では、内間利幸被告の再犯による逮捕は現行のプログラムを見直すきっかけとなりえるものだったと思います。が、遺族側が騒ぎにならないことを願ったためマスコミの取り上げ方も及び腰で、大きな議論にはなりませんでした。幼い子を無惨に殺された遺族の心中を想うと複雑で、無理からぬことだとも思うのですが。

高橋 来年の刑法改正案では、性犯罪の非親告罪化、強姦罪の法定刑引き上げなどが盛り込まれそうですが、厳罰化することで再犯防止につながると思われますか?

斉藤 厳罰化だけしても、出所すると再犯する可能性が決して低くないことはこれまでの歴史が証明しています。が、逮捕は重要なきっかけです。私たちのプログラム受講者の多くは、「逮捕されなければ、ずっと続けていた」といいます。では、その後も再発防止を継続するために、いま何をすべきか。厳罰化と再犯防止プログラムは必ずセットで検討されるべきもの、というのが私の考えです。

 性犯罪者の初犯を防ぐのは現実的に難しい。一度逮捕された人を確実に更生につなげて再犯防止することが、現段階で唯一可能な、性犯罪の発生件数を減らす手段である。両氏の対談に出てきた加害者にとって、逮捕は終わりではなく、再犯防止への始まりともいえる。2017年、この事実を踏まえて議論が深まり「魂の殺人」といわれる性犯罪が一件でも減ることを願いたい。