2017年1回目となる今回は、過去1年を振り返り、今年の住宅の売買に必要な戦略を読者と一緒に考えたいと思う。不動産市場に様々な影響要因があるなか、これから自宅を売買しようとする人にとって、移ろいつつあるトレンド、普遍的に変わらないトレンドを区別して対処する必要性が、高い年になりそうである。不動産市場は不透明感があっても急に大きく動いたりしない。現状の延長線上で、落ち着いてとるべき振る舞いを決めておいた方がいい。
「杭問題」以降のマインドは低下
2016年のマンション市場を総括
まずは、2016年のマンション市場の総括をしよう。昨年の新築マンション価格は、3年間連騰した後を受けて、当初は上昇相場が継続すると思われた。これは、アベノミクスの金融緩和により不動産価格が堅調にインフレしてきたことからも想定しやすかった。しかし、2015年秋に発生した「杭問題」以降、急速にマンション需要は冷え込んでしまった。価格が安くない中で、スタイルアクトが提供する「住まいサーフィン」での購入者調査でも「買い時」と思う層が減り、マインドの低下は売れ行き悪化につながった。結果的に、2016年の価格は前年比でやや高くなったものの、供給戸数は15%ほど減少した。
中古市場については、筆者は2015年10月の当連載で、在庫が急増し始めたため、売るなら在庫が多くなる前に対処すべしと警告していた。その結果は、同じく2月に検証したように「潮目が変わった」と位置づけられ、価格も頭打ちになる形で証明された。売出と成約の価格差はかつてないほど大きく開き、成約する物件数が減ることになった。
そんな中にあって、売れ行きをある程度保てたのは、金融緩和の最終局面におけるマイナス金利導入の影響が大きい。金利が1%下がることで住宅購入者の月々のローン返済額は15%超下がる。つまり、十数パーセント価格が上昇しても金利が1%下がれば、返済額は同額の負担になる。家賃負担との関係でローン返済額を考えるならば、金利が相当な追い風であったことは改めて確認しておきたい。
価格水準は横ばいに?
2017年の市場はどうなる
次に、2017年の市場予測だ。2016年の価格水準では、供給者側が今後も販売リスクを抱える状況は変わらない。売れ残りが増え、値下げ交渉ができるようになるかもしれないが、金融緩和は継続されるので、表向きの価格水準は横ばいを続けるのではないかと予測している。