1月1日は午前5時半から激務が延々と続く

 天皇の“お仕事”として、数多くの儀式もある。筆者が(陛下のご高齢による公務削減前の)2004年にカウントしたところでは、陛下ご出席の儀式・式典は年間約80件ある。そのうちの一つで、最も重要な儀式とされる1月1日の「新年祝賀の儀」を見てみよう。午前10時、天皇、皇后両陛下は皇居・宮殿「松の間」(最も格式の高い部屋)で各皇族からの(新年の)祝賀を受ける。両陛下で正面に立ち、皇太子さま、皇太子妃雅子さま、秋篠宮さま、秋篠宮妃紀子さま、他の宮家皇族……(それぞれ男性皇族、妃殿下の順)。

 11時になると、松の間の向かって右隣にある「梅の間」で首相、各大臣、官房長官・副長官、各副大臣らの夫妻から祝賀のあいさつ。続いて再び松の間に移動、衆・参両議院の議長・副議長、正月も東京に残っている国会議員らの夫妻から同様に。その後、左隣の「竹の間」に移動し、最高裁判所長官、同判事、各高等裁判所長官らの夫妻から。

 11時半からは、各中央省庁の事務次官、都道府県の知事や都道府県議会議長ら(宮内庁が毎年交代で複数指名する)の夫妻から。

 午後2時半になると、松の間で、各国の駐日大使夫妻から祝賀を受けるが、午前に行われた各あいさつのように代表だけが行うのではなく、約130カ国全ての夫妻が順番に両陛下の前に進み出てあいさつする。これだけで約1時間。その間、両陛下は立ちっ放しだ。

 儀式としての新年祝賀の儀は以上だが、実は元日は、午前10時からのこの儀式開始前、住まいの御所(宮殿から約500メートル離れている)で、普段、両陛下の身の回りのお世話をする宮内庁侍従職の職員からの新年のあいさつも受けられている。

 さらにそれをさかのぼること約4時間、午前5時半に陛下は宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)の前の庭で、古式装束を身に着け、国家の安寧と豊作を四方の神々に祈る「四方拝(しほうはい)」という祭祀を行われる。この時間はまだ暗く、気温は約3度。さらに5時40分から、宮中三殿で拝礼する年始の祭祀「歳旦祭(さいたんさい)」に臨まれる。

 これらのほか、天皇の公務には、社会のさまざまな功労者と面会しねぎらう「拝謁」(年約100件)、訪日した外国の要人と皇居で面会する「会見」(約50件)、既に紹介した儀式に含まれているが、外国から日本に赴任する大使が持参の信任状(派遣する側の国の元首が、任命した大使の人格・能力を保証し、外交特権を与えてほしい旨を記した文書)を天皇が宮殿で受け取る「信任状捧呈式」が約40件。

激務の合間を縫って、静養される天皇陛下と皇后さま。代休すらほとんど取れないのだ Photo:JIJI

 こうして公務を積み重ねていくと年間約700件もの公務を行われることになる。式典は土・日曜に多く、平日も公務があるため“代休”もままならない。

 筆者のカウント(04年)では、年間119日の土・日曜、祝日のうち、代休が取れず、陛下が“休日出勤”された日が計30日、つまり1カ月分あった。また、春・秋など式典が多く、叙勲シーズンとも重なれば、1日に6件の公務が入る日もある。

 04年に比べれば公務が削減されたとはいえ、陛下ご自身が削減に消極的ということもあり、いまだに膨大な量の公務を抱えている。

 一般国民でいえば退職年齢を超えた後期高齢者で、がん・心臓と2度の手術を乗り越えた方だと考えれば、ニュースで見聞きする「御用邸でのご静養」なども必要となる理由が分かっていただけると思う。「お気持ち」の裏には、こうした実態があることをぜひ、知っておいてほしい。

(産経新聞記者 山本雅人)

やまもと・まさと/1967年生まれ。学習院大学文学部卒業後、産経新聞社入社。社会部時代に宮内記者会で皇室取材を担当。著書に『天皇陛下の全仕事』『天皇陛下の本心 25万字の「おことば」を読む』など。