
『週刊ダイヤモンド』9月17日号の第1特集は「日本人なら知っておきたい 皇室」です。知っているようで知らない皇室について、68ページの大特集で紹介しています。日本人にとって天皇や皇室とはどのような存在なのでしょうか。『ミカドの肖像』など、天皇に関する著作の多い猪瀬直樹氏に聞きました。
――猪瀬さんは『ミカドの肖像』や『天皇の影法師』など天皇に関する著作も多いです。日本人にとって、天皇や皇室はどのような存在だとみていますか。
その話をする前に、まず、海外の人から皇室がどのように思われているか、話しましょう。日本人が思っている以上に、海外の人たちは、日本の皇室に神秘性を感じています。これほどの歴史を持つ王室はほかにありませんから。
実は、2020年の東京オリンピックの招致成功の裏には、皇室の存在があったのです。また、私自身の『ミカドの肖像』を執筆したという経験も、大いに生きたのです。
――え、そうなんですか。
はい。国際オリンピック委員会(IOC)の委員には、海外の貴族が多いんですね。
名前に「サー」と付くような方や、王族と親戚だったりする方もいる。だから、日本の皇室にどれほど価値があるのかを、理解しているのです。
そこで、13年1月7日に立候補ファイルを申請してPRが解禁になると、すぐにロンドンへ行き、日本招致をアピールしたのですが、その際に配布した資料には、『ミカドの肖像』から引用した一文を英訳して記載しました。
次のステップとして、13年3月にIOCの評価委員が、東京に来ることになりました。そこで、ぜひ、皇室の方々に協力をお願いしようと考えたのです。
ところが、実を言うと、宮内庁との交渉はマイナスからのスタートでした。
「木っ端役人」発言で
五輪招致が窮地に
――それはなぜでしょうか。
東京は16年のオリンピック招致にも名乗りを上げていました。当時の石原慎太郎・東京都知事も皇室の協力を仰ぐべく、宮内庁と交渉を始めていました。
ところが、皇室がオリンピック招致に関わることに宮内庁が慎重な姿勢を見せると、しびれを切らした石原さんが宮内庁の職員に対して、「木っ端役人が、こんな大事な問題、宮内庁の見解で決めるもんじゃない」と言ってしまったんですよね。もちろん、熱意の裏返しではあるのですが、その状態を私は引き継いだのです。