産業界の防御ポイント

 ところが、である。政府の締め付けにも産業界はどこ吹く風だ。

 まず、今回のガイドライン案はあくまでも「案」にすぎず、法的拘束力を伴うものではない。ガイドライン案が実効力を持つには、労働契約法など3法の改正が必須だが、その日程が定まらない。

「早ければ秋の臨時国会に法案提出は可能だが、現実的には18年秋にずれ込むこともなきにしもあらずだ。それまで、『案』は棚上げになる」(ある官庁幹部)という。

 次に、産業界が懸念していた「立証責任の(労働者から企業への)転換」は見送られた。正社員と非正規労働者との待遇差をめぐって訴訟となった場合には、今回のガイドライン案が司法判断の根拠ともなり得る。ただし、その不合理な差別の立証責任は企業ではなく、労働者が負うこととなり、産業界は最大の防御ポイントを守り切った。

 もっとも、これで公平な労働ルール策定を進める「働き方改革」を産業界が後退させていいということにはならない。政府方針に依存することなく、格差是正と労働生産性を両立させた対策が急務であることは言うまでもない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)