いよいよトランプ大統領が誕生する。従来とは不連続な経済政策を掲げるトランプノミクスは世界経済の不確実性を高める。3つのシナリオで米国経済と世界経済への影響を占ってみよう。(「週刊ダイヤモンド」論説委員 原 英次郎)

 いよいよトランプ政権が船出する。今年の世界経済の最大の注目は、なんと言ってもトランプ大統領がどんな政策を打ち出すかである。世界最大の経済規模を誇る米国経済はどうなるのか。日本総研のシナリオをベースに考えてみよう。

「去年のキーワードが“想定外”だったとすれば、今年のそれは“不確実性”」。こう語るのは、日本総研の山田久調査部長である。「正直に言って、予測困難」(山田部長)なので、3つのシナリオを描いている。

「トランプノミクス」とも呼ばれるトランプ大統領の経済政策を内政と外政に分けてみると、相矛盾した特徴がある。内政面では大幅減税、大規模インフラ投資、規制緩和で経済成長率を押し上げる政策が柱である一方、外政面は大統領就任前の企業への「口先介入」に見られるように不透明で、保護主義的であり、成長率を押し下げる要因になる。

 加えて、トランプノミクスのすべてが、その通りに実現できるわけではないことも注目しておく必要がある。

 減税やインフラ投資など財政に関わるテーマは、議会の承認が必要となる。トランプ氏は共和党の大統領で、共和党が上下両院で過半数を押さえているとはいえ、トランプ氏は共和党主流派を批判して大統領候補にのし上がった。このため共和党といかにうまく付き合えるかがカギを握っている、これに対して、対外政策は大統領権限で実行できることが多い。

 このため3つのシナリオはある前提を置き、「どのような要因で、(成長率などが)どの程度ぶれるかを分析した」(日本総研・井上恵理菜研究員)。