Fintechの代表的なサービスとして、2012年頃から税理士や企業へ急激に普及し始めた「クラウド会計」。

一般的に、クラウド会計のメリットは、「業務効率が格段に上がる」「資金繰りをタイムリーに共有することで経営分析や資金調達に役立つ」「社会保険料率や税制改正に自動対応するため業務効率が上がる」「資金繰りの不安が一掃されて、“数字に強い社長”になれる」といったものが挙げられます。

とはいえ、「本当に自分の会社に役立つのかわからないから、まだ導入しない」というケースも多いようです。そこで本連載では、書籍『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』の内容を元に、100社以上にクラウド会計を導入してきた税理士と会計士が、具体的なメリットや導入法・活用法を解説していきます。

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ひと口に「クラウド会計」と言っても、「1つのクラウド会計ソフト会社が提供するソフトの総称」としての意味と、「クラウド会計ソフト会社と連携している別会社のサービス」としての2つに意味で使われることがあります。

クラウド会計の可能性を最大限に活かすためには、この2つそれぞれのしくみを理解しておくと良いでしょう。

(1)1つのクラウド会計ソフト会社が提供するソフトの総称

たとえば、クラウド会計ソフトの1つ、マネーフォワード社が提供する「MFクラウドシリーズ」では、「MFクラウド会計」を中心として、「MFクラウド給与」「MFクラウドマイナンバー」「MFクラウド請求書」「MFクラウド消込」「MFクラウド経費」など、会社の業務を管理するための、さまざまな関連ソフトが用意されています。

これらは相互に連動しており、たとえば「MFクラウド給与」で給与計算をすれば自動的にMFクラウド会計に給与の仕訳が生成されたり、「MFクラウド請求書」で請求書を作成して送付すれば、自動でクラウド会計に売上の仕訳が生成されます。
 

【さまざまな関連ソフトと連携している】



また、次の表は、主なバックオフィス業務と、クラウド会計がカバーできる「守備範囲」を示したものです。現在、唯一在庫管理だけは、クラウド会計会社が提供するクラウドソフトだけでは管理することができませんが、ほとんどの業務をカバーしていることがわかります。

【バックオフィス業務と、代表的な2つのクラウド会計ソフトの守備範囲】


 

(2)クラウド会計ソフト会社と連携している別会社のサービス

たとえばiPad用のPOSレジシステム、クレジットカード決済システム、クラウドソーシングサービスやネットショップ構築サービスなど、別会社のさまざまなサービスが、クラウド会計と連携しています。

これらの連携サービスも利用すれば、さきほどの在庫管理もできます。つまり、主なバックオフィス業務はすべてクラウド管理できるということです。

同じくマネーフォワード社のMFクラウドシリーズのケースで言えば、ASKUL、Amazon、USEN Registerなどのほか、2016年末月現在、次のようなさまざまなクラウドソフト会社と連携しています。

【マネーフォワード社の「MFクラウド」シリーズが連携している他のクラウドソフト提供会社】


なお、従来のスタンドアローン型の会計ソフトに搭載されている、月ごとに入力されている仕訳を修正できないようにロックする機能や、2015年に改正された電子帳簿保存法による領収書等の電子保存にも対応しています(「クラウド経費」)。

別会社のサービスと連携する場合は
セミナーに参加しておこう

一般的に、クラウドに対しては、「便利さ」よりも、「セキュリティ面の不安」を最初に訴える人が多く、その不安が、クラウド会計導入を妨げる1つの要因になっています。

そもそも、安全面での信頼性はクラウドサービス提供にあたっての大前提となるため、サービス提供各社は、セキュリティ対策を最重要事項に位置付けています。詳細は各社の情報をご参照いただきたく、ここでは省略しますが、総じて、高水準の安全性が確保されていると言ってよいでしょう。

ただし、上記(2)の別会社のサービスと連携する場合には、その会社が構築しているセキュリティレベルに依存することになるため、万が一、セキュリティを破られてしまう可能性も拭い切れません。

クラウドシステムを導入することには多彩なメリットがありますが、そうした問題が起きた時、会社で構築しているクラウドシステムを元通りに修正するのは、経理部員が中心になるでしょう。焦らずにトラブル対応できるよう、各クラウド会計ソフト提供会社や会計事務所で行なわれている、クラウド会計の使用法のセミナーなどに参加しておきましょう。

なお、他のクラウドサービスとの連携方法や具体的な活用法は、書籍『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』で、実際の利用画面をもとに詳しく解説しています。クラウド会計の導入を具体的に検討されている方は、是非参考にされてください。