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トランプのツイートを瞬時に事実確認するツールを
ワシントンポストが開発

――深まる米メディアと大統領の対立、各社の対応

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第423回】 2017年2月6日
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 ホワイトハウス主席戦略官のスティーブン・バノン氏は1月末、ニューヨーク・タイムズに電話をかけ、「メディアは野党と同じだ。この国を理解していない。なぜトランプが大統領に選ばれたのかも、まだわかっていない」と述べ、「メディアは黙っていろ」と告げた。バノン氏は選挙でトランプ陣営に関わる前は、極右メディアの『ブライトバート・ニュース』の会長を務め、自身も女性蔑視や人種差別だとされている人物である。

 報道メディアや知識人らが、「報道メディアは、政府のウォッチドッグとしての責任を果たさなければならない」(CNN)、「嘘があった際にはそれを指摘し、正確にフェアに報道するのがメディアの責任だ」(USAトゥデイ)などと反発したのはもちろんだ。

 ただ、トランプ大統領は真夜中のツイートやフェイスブックによって、報道メディアを介さず直接国民に訴える術を心得ている。その内容が嘘であっても、ツイートは否応もなく拡散していく。また、ホワイトハウス報道官ショーン・スパイサー氏は、記者の質問にまともに答えずトランプ大統領を持ち上げるばかり。そしてメディアに多出する大統領顧問のケリーアン・コンウェイ氏は、テレビに登場しても一方的に話すばかりだ。

 だいたい、報道メディアがトランプ政権を非難すればするほど、ホワイトハウスはメディアへの不信感を煽り、支持者から歓声が上がる。アメリカの報道メディアは、その悪循環にすっぽりと陥っているところだ。これは、「政府のウォッチドッグ」などという言葉が無効でしかない相手との闘いなのである。

報道メディアにとって未知の相手

 報道メディアは、大統領としてこれまでにないタイプの相手に翻弄されているのだが、メディアの内側からさまざまな方策を講じる動きが少しずつ出ている。「従来のやりかたは通用しない」とメディアが理解し始めたのだ。それは、例えばこうしたものだ。

 まず、トランプ政権の嘘をどう扱うか。これまでならば、嘘の発言を引用しつつ、真実の数字を並べるなどしてその差異を記述し、読者に理解を促しただろう。だが今、報道メディアは「嘘」や「虚偽」という言葉を使い始めている。

 ニューヨーク・タイムズは、大見出し部分で使った。「トランプ大統領、メディアを批判しつつ2件の虚偽を働く」といった風にである。もはや「トランプ大統領が○○○と発言」と伝えても、その背後にある深意が伝わらない時代になっている。嘘と掲げなければ、トランプ大統領の発言をオウム返しにして拡散するのに加担するだけになってしまうからだ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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