管理職のミッションは「部下を通して仕事の成果を上げること」。上司として、いかに部下を成長させるかが問われます。『課長のための「やらない」教科書』著者で人材育成コンサルタントの田原洋樹氏は、部下を伸ばす近道は、教えずに部下自身に考えさせることに尽きると説きます。そのための第一歩、まずは部下との対話の仕方を変えてみましょう。

「あえて教えない」という
意識改革が課長に求められる

「課長は部下の立派なお手本でなければならない」と意気込んでいる課長は少なくないと思います。そして、仕事のことはすべて知り尽くしているかのごとく振る舞おうとします。

 じつは課長に就任したばかりの私もそうでした。新任であるということで、無用なプレッシャーを自身にかけすぎていました。部下から「課長なのに、こんなことも知らないのか」と思われることが怖かったのだと思います。ちっぽけなプライドを持っていたのかもしれません。

 しかし、今だからいえることですが、このようなプライドはチームの仕事をマネジメントする立場、部下を教育する立場としては、むしろマイナス要因となることが多いのです。

 なぜなら、「上司は仕事のことをなんでも知っていて、それを部下に完璧に教えることができなければならない」と勘違いをしてしまうからです。

「課長はなんでも知っているスーパーマン」ではありません。だから、一方的に上から下に教えるというスタンスは必要ないのです。

 いやむしろ、「あえて教えない」という意識変革が課長には求められるのです。