Photo:AFP Third Party=JIJI
米国とイスラエルによる対イラン攻撃の開始で、中東情勢は一気に緊迫した。ホルムズ海峡封鎖や原油高への警戒が強まるなか、日本株はどこまで下げ、どこから戻るのか。企業業績などから見れば日経平均株価は5万5000円前後が妥当水準ではある。戦闘終結が見えれば5万9000円を目指す可能性もある。過去の中東軍事行動を手掛かりに相場シナリオを探る。(マネックス証券チーフ・マーケット・アナリスト 吉野貴晶)
イランの戦闘終結はいつか
日本株の行方を左右する核交渉とホルムズ海峡
2月28日、米国とイスラエルはイランに対する攻撃を開始した。今回の攻撃は現時点では空爆を中心とした軍事行動であるものの、両国間の軍事衝突は本格化しており、事実上の戦争状態に入ったとみられる。
当初、トランプ米大統領は今後の攻撃期間について「4~5週間」と述べ、戦闘は比較的短期間で終結するとの見通しを示していた。しかしその後、イラン側の報復が中東地域の米軍基地などにも及び、戦闘が周辺地域へ拡大する懸念も指摘されている。現時点では、戦闘終結のシナリオは必ずしも明確とはいえない状況である。
本稿では、今回の対イラン攻撃が株式市場に与える影響や今後の相場シナリオを過去の米国主導の軍事行動の事例をひも解きながら予想する。
米国とイスラエルによる攻撃は、イラン側に大きな打撃を与えたとみられる。今回の空爆ではイラン最高指導者ハメネイ師が死亡したほか、政府高官や軍幹部も相次いで犠牲となった。また、各地の軍事施設やミサイル関連拠点が攻撃を受け、イラン軍の軍事拠点の多くが破壊されたと報じられている。
もっとも、こうした攻撃によってイランの軍事力が弱体化したとしても、戦闘が早期に収束するとは限らない。イラン側は徹底抗戦の姿勢を示しており、米国やイスラエルに対する報復行動を続けている。今回の衝突でも、中東地域の米軍基地などに対するミサイル攻撃を行うなど、報復姿勢を鮮明にしている。
さらに事態を緊迫させているのが、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖である。ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約2割が通過する重要な海上交通路であり、世界のエネルギー供給に大きな影響を及ぼす。
戦争が長期化する可能性も指摘されている。仮に米国が当初掲げていたイラン現体制の転覆までを目指すのであれば、戦闘は長期化し、年末以降まで続く可能性もある。さらに一部には、ロシアなどがイランを軍事面で支援するような構図となれば、戦争が数年単位の長期戦に発展する可能性を指摘する見方もある。
もっとも、現在はイランによる周辺アラブ諸国への攻撃も発生しており、中東地域ではイランへの警戒感が強まっている。こうした状況の下では、イランを支援する国に対してもアラブ諸国から批判が集まる可能性が高く、大規模な軍事支援が広がるとは考えにくい。
その意味では、数年単位の長期戦に発展する可能性は現時点では高くないとみられる。一方で、米軍の軍事力は圧倒的であり、軍事バランスだけを見れば比較的早期に決着がつくとの見方も少なくない。
トランプ米大統領は戦闘終結の条件にも言及している。トランプ氏はイランが核開発を放棄することを停戦の条件として示しており、核開発問題を巡る交渉が今後の重要な焦点となる。同氏は、無条件降伏を要求し始めた。必要であれば地上軍の投入も排除しない姿勢を示しており、場合によっては軍事作戦がさらに拡大する可能性も否定できない。
一方、米国では中間選挙を控えており、トランプ政権としては戦闘の長期化は避けたいとの思惑が働く可能性はある。政治日程を考えれば、可能であれば夏場前まで、場合によってはトランプ氏が当初示した「4~5週間」、すなわち1カ月程度で戦闘を終結させたいとの意向があるだろう。
イラン側にも長期戦を望まない事情がある。戦火の拡大によって国際社会との対立がさらに深まり、国内では現政権に対する支持が必ずしも高くないとの指摘もある。加えて、長年の制裁によって経済状況は厳しく、戦争が長期化すれば国内経済への負担は一段と大きくなる。
こうした点を踏まえると、現実的なシナリオとしては、イランの現政権体制を維持しつつも、米国の要求を一定程度受け入れる形で交渉がまとまる可能性がある。
具体的には、核開発の放棄や大幅な制限を受け入れる一方で、限定的な核関連施設の保有などが認められる形で妥協が模索される展開である。その場合、戦闘は夏場前、場合によっては開始から1カ月程度という当初の想定に近い形で収束する可能性もある。
次ページでは、さまざまな政治・軍事のシナリオを踏まえたうえで、日本株市場への影響を考察する。







