筆者は、これまでダイヤモンド・オンラインで、「モンスター◯◯」を度々取り上げ、実録として紹介してきた。今回は、通常の感覚では理解しかねるような「モンスター人事部」の事例を20~40代男女に聞いて集めてみた。こんなモンスター人事部とかかわったことはないだろうか。

やむを得ない選択だったとはいえ
一社員を潰してしまった人事部

 まずは、モンスター度・初級(「筆者が集めたエピソードの中では比較的軽度であり、初級と分類してみた」と補足しておく)の事例から見ていきたい。本取材を通じて出会った「元・人事」だという女性は、自身が「投げやりな人事をするしかないときもあり、異動先で人材が“迷子”になったり、放置されたりすることもあった」と振り返る。

「私が人事として働いていたのは、グループ全体で数万人を超える大企業でした。定期人事では原則、機構改革(※1)と個別人事(※2)の2つの流れで、多くの人員が異動します。その中でたまに発生するのが、“これといった異動先が見当たらず、投げやりに決めた人事”です。

 異動日前日に、異動先となる部署の社員から『明日から知らない人がうちに来るみたいなんだけど……?』と連絡がきて、こんなやりとりをしたことも何度かありました。

 『……すみません、◯◯さんのこと、よろしくお願いします』『◯◯さんって、何ができるの?』『うーん、今まで全然違う部署にいたので、そちらでの仕事はほぼ未経験です』『……じゃあ、どうしてうちの部署に来ることに?』『部署解体したものの、受け入れ先がなくて。そちらの部署だけ、人件費に余裕があったもので』『人が足りないとは伝えていたけど、誰でもいいって言ったわけじゃないよ(怒)』『すみません。でも、ここは教育からしていただきたいんです。どうかお願いします……』

 とはいえ、教育しようといっても、異動することになった社員は30代半ばの男性。未経験の分野を今さら学び、マスターするには厳しい年齢で、扱いづらさもあったのか、徐々に放置され、内勤事務のような仕事ばかりしていました。当然、評価も下がっていく一方で、その後も彼はいろいろな部署を転々とする存在になってしまったんです。

 実はこういう話は大企業の人事では珍しくなくて、適材適所を心がけていても、どうにもならないことはあるんです。悪意があって決めているわけではないので、モンスター人事部とまではいかなくても、彼みたいな社員からすると『人事部=鬼』だと思われてたんじゃないでしょうか。人事部もつらいです」(30代女性)

 ※1 不要になった部署を解体して、中にいた社員をどこかへ移したり、新しく必要になった部署を作って、そこに社員を配置したりするもの。
 ※2 1つの得意先を長く担当した社員を別の得意先に当てたり、人間関係がうまくいかない社員を別の部署に移したり、セクハラなどで懲戒になった社員を異動したりするもの。