働き盛りの人たちが引きこもり状態に追い込まれていく背景には、職場内でのセクハラやストーカーなどの行為が放置される雇用環境の劣化も一因にある。

 女性会社員が、人事部長からストーカーのようにセクハラ行為を受けた末、退職勧奨へとエスカレート。前職調査に関係する離職票にも嫌がらせをされ、再就職がなかなか決まらないまま、うつ状態に追い込まれた。

人事部長から度重なるホテルへの誘い
会社に事情を訴えると…

 日本海に面した都市で大手企業に勤める30歳代のA子さんは、営業職として成績を上げていた。しかし、その会社では、女性の営業マンというだけで珍しがられた。

 東京の本社からは、何度も人事部長が訪問。独身の彼女はそのたびに様々な形で呼び出され、ホテルにも誘われた。

 彼女は当初、人事部長のことを信用していたという。しかし、ホテルへの誘いにはのらなかった。

 その後、A子さんは、急に配置転換を命じられた。そのときは闘おうと思って、人事部の担当者に連絡を取り、事情を打ち明けると、話を聞いてくれていた。ところが「どこか、いい所ないですかね?」と、ポロッとこぼしたら、「では、再就職支援先を見つけます。有給はどれくらい取りますか?」という条件を突きつけられ、いつの間にか退職勧奨に話をもっていかれた。

 結局、会社側はA子さんの訴えを「2人きりの密室での出来事」として片づけ、「証拠がないから…」を理由に問題にしようとしなかった。社会の一般常識から考えれば、何とモラルの低い会社で働いていたのかと愕然としたという。

 こうなると、自分の身は自分で守らなければいけない。そう思ったA子さんは、会社が加入する全国系列傘下の労組にも相談。団体交渉のために、東京から組合の専従職員が来たものの、どこか論点がズレていた。この組合の職員は、賃金の交渉には長けていたものの、セクハラやパワハラの知識については、ほとんど無知の状態だったのだ。