手作り部分が大半
他の参入企業現れず

 エルプはレーザーターンテーブルを生産する世界で唯一のメーカーだ。もともとは、米国の会社が設計し製品化していたが、エルプの前社長、故千葉三樹が1988年に私財を投じて権利を買い取り、改良を重ねてきた。

 買い取った当時は、100枚のレコードのうち5枚前後しかまともに再生できなかった。それ以外のレコードの再生音は、音が飛んだり、雑音がひどかったり、聴くに堪えないものだった。これはレコードの溝が一様ではない上に、保管状態のいいレコードでも、反っているのが通常だからだ。

 溝が不規則でも、針であれば溝に接触しながら調整できるため再生できるが、初期のレーザーターンテーブルはレコードの溝の不規則さ、変形に対応できなかった。

 エルプの歴史は、ほぼ全てのレコードを針と同様に再生できるように、レーザーをレコードに当てる角度を変えるなどの試行錯誤の積み重ねそのものである。

 その技術開発に携わってきた生産部部長の関塚正幸は、エルプが権利を取得した当初からエルプにいたわけではない。たまたま、エルプに入社する前に勤務していた会社が、レーザーで読み取ったものを電気信号に換える光学ボックスをエルプから受注しており、その製作に関塚が関わっていた。

 また、関塚自身が600枚余りのレコードを保有するほどのレコードマニアで、90年には初期のレーザーターンテーブルを購入しており、強い興味を抱いていた。

 改良の過程で、品質を向上させるには光学ボックスをエルプで内製するしかないという結論に達する。そこで、千葉は関塚を誘い、92年にエルプに入社させる。

 関塚は、部品を日本仕様にするために設計図も描き直した。レーザーで読み取り、変換した電気信号の処理のスピードを上げ、ひずみやノイズが出ないように改良を重ねてきた。現在の製品は初代から数えて5代目のモデルとなる。

 レーザーターンテーブルの心臓部である光学ボックスは80%の部分が手作り。そのため、生産台数は年間で100台程度。受注に生産が追い付かず、注文してから手元に届くまでに1カ月以上かかる。これまで出荷されたレーザーターンテーブルの累計台数は2000台前後でしかない。

 価格も決して安くはない。モデルや仕様により異なるが、1台100万円前後である。購入層は9割が個人の愛好家で、1割が音楽業界、図書館、大学向けなど業務用目的だ。設計・生産に関わる技術についてはオープンにしている。しかし、手作りの部分が多く、大量生産できないために、他の参入企業はない。