日本唯一のレコードメーカーは
生産が追いつかない事態に

 音楽業界では、ここ10年、CDなどのパッケージ商品の売上が激減している。データ配信を含めて、なんとか横ばい状態を保っているのが現状だ。そんな中、唯一売上を伸ばしているのが、なんとアナログレコードである。米国では、レコード販売数は10年連続で増えつづけており、今やアルバム全体の5%を占める「成長分野」になっている。

USB端子、ステレオスピーカーを搭載したMAX LP。RCA端子で接続すれば、家庭のコンポから出力することもできる。定価1万2000円台とリーズナブルな価格だ

 日本でも同様だ。2015年、レコードの生産数は66万2000枚を記録(日本レコード協会統計)。これは前年の40万1000枚に比べ65%も増加した数字だ。今、世界の音楽業界で最も元気なのはアナログレコードと言っても過言ではない。

 この「復活劇」は、12年にビートルズがLPボックスを発売したのがきっかけだと言われているが、その後、著名アーティストが次々とアナログ盤をリリース。日本でもパフュームやきゃりーぱみゅぱみゅなどの若手アーティストの新譜が起爆剤となり、じわじわと広まっていった。

 追い風を得て、日本で唯一のレコードプレス工場「東洋化成」では生産が追いつかない状態だ。レコード針を製造している「日本精機宝石工業」でもフル生産態勢をとっている。

 こういったレコードの復活を大きく後押ししたのが、低価格で買えるプレーヤーだ。レコード再生機と言えば、音楽マニアのための高額機器というイメージをお持ちの方も少なくないだろう。ところが最近は一変。1万円前後で、レコードを聴くのに充分な機能を備えた機器がヒットを飛ばしているのだ。

 ひときわ売れているのが、ION AUDIO(アイオンオーディオ)の「MAX LP」(マックスLP)という製品だ。生産が追いつかず、予約しても数ヵ月待ちという状態が長らく続いた。

 この製品、プレーヤーにスピーカーが内蔵されており、レコードを聴いてみたいという初心者には申し分ない。本体は中国製だが、心臓部にあたるカートリッジは日本で作られており、手作業に頼る部分も多いので、急な増産は難しいという。

「主な購買層は40、50代のシニア世代です。昔、買ったレコードをもう一度聴きたいという方が多いようです。加えて、最近は20代の女性も多いんですよ。購入データを見ても3割が女性。それで昨年の夏、思い切って女性限定のレコードセミナーを開催したら、申込み開始から3日間で80名もの応募がありました」(MAX LP を生産・販売するinMusic Japan青木隆社長)