築地市場の豊洲への移転については、東京都の小池百合子知事が昨年11月7日に予定されていた移転を延期し、予定されていた9回目の地下水モニタリング調査の結果を待って判断するとしていたが、その結果、基準値の79倍ものベンゼンを検出した地点が含まれるなど、従来移転の前提としていた都のコミットメントが果たせていないことが明らかになった経緯にある。さらに、3月19日に公表された再調査の結果は、更に悪化した部分もあるなど、芳しいものではなかった。
ところで、豊洲移転の可否を決めるには、この環境基準の問題だけでなく、豊洲移転後の市場の持続可能性という「金融的な視点」も必要である。本稿では、主に金融の視点から見えてくる現実について論考してみたい。
豊洲移転の可否についての
2つの視点
あらかじめお断りしておくが、筆者は豊洲移転の可否についてはニュートラルな立場である。また、本稿で述べる内容は筆者の個人的見解であって、小池知事ほか誰の意見をも代弁するものではない。ただ単に、既に公開されている資料の解読を試みるものだ。
そもそも豊洲市場への移転の可否判断は、東京都だけで決められるものではなく、その前提として、農林水産大臣からの移転認可が必要だ(卸売市場法第10条)。では、その移転の認可を得るには、どういう条件が満たされる必要があるのだろうか。