東京・築地市場の豊洲への移転をめぐり、小池百合子・東京都知事に注目が集まっている。巨費を投じて完成した豊洲市場の建物は、市場関係者のニーズを無視した設計により、まともに機能しない恐れがあるからだ。工事をやり直すわけにもいかず、延期だけでは解決しそうもない。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

(1)築地市場で荷台の側面の扉を開くトラック(2)豊洲市場は後ろ開き対応(東京都中央卸売市場のホームページ上の動画より)

 午後9時、全国の漁港で水揚げされた魚介類を満載したトラックが、東京の築地市場に続々と到着する。荷台の側面の扉を大きく跳ね上げ、氷と共に商品が詰まった発泡スチロールの白い箱を、フォークリフトで運び出している(写真(1))。

 この作業は未明まで続き、早朝からは商品が種類別に次々と競りに掛けられ、都内のスーパーや鮮魚店、飲食店に納入される。

 戦前から長らく続いてきたこの営みの舞台は、11月7日から、東京都江東区に新たに建設された豊洲新市場に移る計画だが、見通しは極めて流動的だ。

 7月に初当選した小池百合子・東京都知事が選挙戦の最中、「(移転時期について)立ち止まって考える」と発言。近く正式に判断するとみられる。

豊洲を視察した小池知事(右写真)は何を思うか Photo:JIJI

 というのも、当初予定されていた建設費4316億円が、5884億円に膨らんだことに加え、豊洲の土壌汚染や、卸売業者から飲食店などに商品を卸す「仲卸業者」の店舗スペースの狭さが問題視され、市場関係者の間に移転の慎重論や反対論があるためだ。

 では、数カ月延期すれば、豊洲の問題は解決するのか。答えは否だ。延期では到底解決できない根本的な欠陥が、豊洲の建物に存在しているからだ。

 問題は大きく二つある。