筆者の務めるシンガポールの会社では、海外とのやりとりが毎日頻繁にある。メインとなるコミュニケーション手段は、スカイプなどを利用した電話ミーティングだ。時差や出張、家庭の事情で、オフィス外で電話ミーティングに出席することも珍しくなく、電話の後ろで子どもの声や空港のアナウンスが聞こえることも多々ある。しかし、そんなことをマイナスに思ったり、苦情があがったりすることは一切ない。

 今回のケリー一家のようなことは、働き方革命が進めば日本でも十分起こり得る。働き方革命を推進する政府と日本企業に求められることは、「不謹慎だ」と見なされてきた、働き方に関する正体不明のリスクを許容する勇気だ。こうした意識変革が伴わなければ、せっかくの働き方革命も定着しないだろう。

ワークライフバランスで
世界最下位、日本の職場は働きにくい

 日本にいるとあまり感じられないかもしれないが、ハッキリ言って日本の職場は働きにくい。大きな声を出せばジロリと睨まれるなど、息が詰まる雰囲気の会社が実に多いように思われる。 

ふと昔のミーティング写真を見返しても、テーブルにバナナが乗っている海外の会社のほのぼのさに癒される

 当連載で何度も紹介しているが、海外の職場は日本と異なり和気あいあいとしている。筆者がオフィスで仕事をしていると、取引先と電話中であっても、「ケーキがあるよ」「さっさと仕事を切り上げて、おやつを食べよう」などと何度も声をかけられる。女性が積極的に働く職場のせいか、はたまたシンガポール人の気質のせいか、甘いもの好きが多く、毎日必ず仕事を中断させられている。

 しかし筆者は、こうした会社の風潮に感謝している。こんな他愛もない“おやつタイム”が、貴重な情報交換の場となっているのだ。

 実は、多くのグローバル企業は個々人の仕事の範疇がハッキリと分かれており、隣のデスクの人がどんな仕事をしているか、よくわかっていない。また出張も多く、お互い顔を合わせる機会も少ない。そんな環境下でのおやつタイムは、いわゆる日本の「タバコ部屋」のようなコミュニケーションの場であり、会社のグローバルでの事業・組織変革の動きや、部署の新しいサービスなど、自分の仕事だけの範疇では得られなった情報を得られるチャンスなのだ。

 筆者はこれを「hallway talk(廊下での雑談)」と前向きに捉え、話し込むようにしている。皆さんも、無駄だとも捉われがちなコミュニケーションに潜む有用性を、見逃さないようにしていただきたい。