生産性向上に向けた政策が
不十分な働き方改革
新聞を見ると、毎日にように“働き方改革”という言葉が踊っています。安倍政権の現在の最重要政策なので当然ではありますが、ちょっと首を傾げたくなってしまいます。
というのは、実際に動いている目立った政策が、同一労働同一賃金の実現に向けた非正規雇用の待遇改善と、長時間労働の是正くらいだからです。後者について、今週に入って残業時間の上限を設定することで政府・経団連・連合が合意しましたが、それを総理や官房長官が“歴史的な大改革”と自画自賛するのを見ると、いよいよ首を傾げたくなってしまいます。
そもそも働き方改革は何のために行うのでしょうか。働く側のために賃金の上昇とワークライフバランスを実現するとともに、経済全体では生産性の向上と労働人口の増加(人口減少への対応)を実現するためになると思います。政策目的としては4つが考えられるのです。
この観点から考えると、長時間労働の是正をはじめ、働き方改革で検討されているテーマの多く(テレワーク、女性の活躍、高齢者の就業促進、子育て・介護と仕事の両立、外国人受け入れ)が、主にワークライフバランスや労働人口増加のための政策です。逆に言えば、日本経済にとってもっとも重要な課題である生産性の向上と賃金の上昇に向けた政策はそんなに多くないのです。
もちろん、非正規雇用の待遇改善は、非正規の賃金上昇のためにやって当然の政策です。ただ、低賃金で喘いでいるのは非正規だけではありません。最低賃金を大幅に上げることが、ブラック企業を撲滅するためにも必要なはずです。
かつ、大事なのは、それらはあくまで賃金上昇のための政策に過ぎず、それだけで自動的に生産性も向上するなどあり得ないということです。