足の踏み場もない汚部屋で
片づけられない妻に切れる
(こんなはずじゃなかった)
足の踏み場もないほど散らかった室内を見ながら、実さん(仮名・35歳)は暗澹たる気持ちでいた。
妻、愛美さん(仮名・30歳)とは社内恋愛の末、1ヵ月半ほど前に結婚したばかり。
時間にルーズで忘れっぽいが、好奇心旺盛で面白い発想をする頑張り屋さん。おっちょこちょいで、些細なことでパニクっている様子も愛くるしい。
(この子は僕がいなきゃだめなんだ。守ってあげたい。結婚したらきっと、健気に尽くしてくれる可愛い奥さんになるだろうな)
実さんは、そんなふうに思っていた。
探究心旺盛で努力している姿勢は見える。しかし飽きっぽい。
何より、ここまで片づけられないというのは、まったくの想定外だった。
目の前の惨状は、まさに「汚部屋(おへや)」であり、テレビのニュースやバラエティ番組に登場する「ゴミ屋敷」そのものだ。
しかも、純粋に「ゴミ」だけならまだいいのだが、困ったことに「大切なモノ」が混在している。
結婚前に実さんが贈ったバッグも、愛美さんのお気に入りの服も、新婚旅行のお土産も、銀行印や重要書類も、全部が全部、この山のどこかに埋もれているのだ。