NPO法人「心に響く文集・編集局」代表の茂幸雄さん

 岩場に向かう通りの中ほどにNPO法人「心に響く文集・編集局」の活動拠点がある。同法人代表の茂幸雄さんは「東尋坊の“ちょっと待ておじさん”」。福井県警OBで、三国署(現・坂井西署)勤務時代、自殺防止のパトロールを始めた。任期中、自殺したとみられる21人の検視を行い、約80人を保護した。自殺を思い立って東尋坊に来るのは、9割以上が福井県外以外の人らしい。

「自殺者が家族に宛てた遺書をみせてもらいましたが、誰一人『死にたい』とは書いていませんでした。また、金銭問題などはっきり原因が分かる人は少ない。人間関係のつまずきといった、ちょっとしたきっかけで自殺を考えた人が『助けてくれ』と心の中で思っても、救いの手を差し伸べられていない現状があります」(茂さん)

 定年退職後の2004年4月にNPO法人を立ち上げ、現在はメンバー16人がローテーションを組んで午前11時から日没までのパトロールに当たっている。このほか、講演活動や著書を通じて自殺防止を呼び掛け、自殺を思いとどまった人と関わって、職場・家庭・地域の人と連携を取りながら問題の解決を支えている。

日本海側有数の景勝地、東尋坊

 茂さんによると、東尋坊での自殺者は過去40年間に10人から30人で推移してきたが、NPO活動を始めると減少に転じ、14年は最少の7人と初めて2桁を割った。15年は12人、16年は14人と増えたものの、17年は3月末の時点で0人である。茂さんたちの活動とともに、「ポケモンGO効果は絶大」とのこと。「このペースで、自殺者ゼロが続いてほしい」という。

 ポケモンGOのプレーヤーが集まる芝生の広場、かつては自殺を決意した人が最後に思いを巡らす場所だった。東尋坊に足を運ぶと分かるが、荒々しい岩肌は約1キロにわたって続いており、眺望のいい記念撮影スポットから少し奥に入ると人通りの少ない場所がある。

「自殺願望者が暗がりに身を隠し、日没を待って観光客を避けて岩場へ向かうことなどないように、パトロール体制をもっと充実させます」と茂さん。現在、ドローンの導入を検討しているとのこと。「ポケモンGO効果」を喜んでいても、気は抜けないのである。

(ライター・若林朋子)

dot.より転載