地下鉄が空を飛んだ!
銀座線はその名の通り、東京・銀座から西は渋谷、北は浅草を結ぶ首都圏地下鉄の大動脈(*1)です。全長14㎞ちょっとなのに19駅もあり、最高時速も65㎞に過ぎません。
丸ノ内線も同様です。東京・丸の内を中心に、新宿・荻窪と池袋を結びます。支線を除く24㎞に28駅がひしめき、新宿駅と新宿三丁目駅(新宿御苑の近く)間は、たった300mしかありません。
そしてこの2つの地下鉄には、共通の面白い特徴があります。
ある日、丸ノ内線に乗っていました。
昼間なのでそこそこ空いていましたが、ドア脇に立っていました。そうしたら、逆側のドアにへばりついている、小さな少年がひとり。
ようやく顔が、ガラス部分に届くほどの背の高さ。年長さんくらいでしょうか。
地下鉄だからドアの外は真っ暗。ガラスをのぞき込んでも、自分の顔と、ときどき光る白いライトが見えるくらい。
なのに熱心に見続けています。
ところが突然、周りが明るくなり、列車は空中へと放り投げられたかのように! 少年は「わあっ!」と声を上げます。
上は青空、はるか下には川、横は緑の崖と白い大きな橋が、パノラマのように拡がります。
でもそれも一瞬。すぐにまた、列車は漆黒(しっこく)の闇の中に戻っていきます。
少年は興奮した声で、となりのお母さんに問いかけます。
「お母さん! どうして地下鉄なのに、お外に出るの?」
*1 一日の運行本数は上下合わせて約740本。早朝から深夜まで、2~3分おきに運行されるので、日中時刻表を気にする人は、いない。