原発事故はいまだ終息していないものの、東日本大震災から3ヵ月近くが経ち、当初の混乱は収まりつつある。今後焦点となるのは、復興需要を見据えた日本経済の行方だ。震災の影響により、1~3月期の実質GDP(1次速報値)は対前期比3.7%も落ち込んだ。果たして、日本経済は復活できるだろうか。野村證券金融経済研究所の木内登英・経済調査部長兼チーフエコノミストが、2011年度の経済シナリオを語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
大震災で沈んだ1-3月期のGDP
供給が回復すれば大きくプラスに転じる
――原発事故は終息していないものの、東日本大震災から3ヵ月近くが経ち、当初の混乱は収まりつつある。今後焦点となるのは、復興需要を見据えた日本経済の行方だ。震災の影響により、1~3月期の実質GDP(1次速報値)は対前期比0.9%、年率換算で3.7%も落ち込み、2四半期連続のマイナス成長となった。2011年度の日本経済をどう見ているか。
日本経済は夏場にかけて回復が始まり、早期に震災前の水準を回復すると見ている。野村證券金融経済研究所では、7-9月期の実質GDPを年率で+5.1%、10-12月期を同+6.6%と予測する。
今回の震災の特徴は、需要が大きく落ち込んでいるわけではなく、供給が急減したことにより、一時的に経済が落ち込んだことだ。需要が大きく落ち込むと経済はなかなか回復しないが、今回は個人に消費の自粛ムードが広がったものの、需要はそれほど落ち込んでいない。そのため、回復ペースは早いはずだ。
サプライチェーンの混乱や電力不足によって落ち込んでいた企業の生産は、電子部品メーカーの供給が復活することにより、自動車をはじめとする製造業全体で供給制限がなくなり、9月にはフル稼働の状態に戻ると見られる。
さらに10-12月期になると、復興需要が本格的に盛り上がってくる。生産が戻って雇用や所得が改善することにより、この時期からは個人も景気回復感を持つようになるだろう。
――震災直後は、経済の先行きについて比較的慎重な見通しを発表する専門家が多かったように思う。「V字回復」観測の背景には、当初世の中で予想されていたよりも、回復基調が早かったことがあるのだろうか。
世の中で楽観論と悲観路が分かれたのは、特に7-9月期だ。専門家の中には、サプライチェーンの混乱や夏の電力不足などの影響を大きめに見て、年度を通じてマイナス成長と予測する人もいた。