要約者レビュー
「夢をあきらめないこと」の大切さを語らせたとき。
栗山英樹
216ページ
河出書房新社
1300円(税別)
著者・栗山英樹の右に出る者は、そう多くはいないだろう。
2016年、北海道日本ハムファイターズは、最大11.5ゲーム差をつけられながら大逆転し、パ・リーグを制覇。日本シリーズでも2連敗という劣勢をひっくり返し、見事日本一に輝いた。「可能性が0.001パーセントでも残されているなら、それに向かって突き進まなければ」という、著者の信念が実った瞬間だった。
本書『栗山魂』を読みすすめていくと、その信念はなかば狂気のようにも思えてくるかもしれない。「最後まであきらめなければ夢は叶う」というテーゼは、頭のなかでそうだと考えていても、なかなか実行できないものである。「なりたい」という気持ちと、「なる」という決意のあいだの溝は、思った以上に深い。だからこそ、人はその闇に吸いこまれていく。
だが、著者は何度挫折しても、そのたびにどん底から這い上がり続けた。それは著者自身の不屈の精神にくわえて、周囲の人たちの支えがあったからこそ可能だったのだろう。
多くの壁にぶつかり続けた著者だからこそ、その眼差しはあたたかい。愛をもって相手に寄り添い、その良さを引きだしていく著者の生き様は、ビジネスパーソンにとっても大きな学びとなるにちがいない。(石渡 翔)
本書の要点
・高校や大学を選ぶときは親の意向にしたがった著者だったが、プロ野球選手になるという夢だけは最後まで諦められなかった。
・プロ野球選手になった当初は、周りのレベルの高さに自信を失ってしまっていた。だが、監督に励まされるうちに、徐々に自分のプレーを取り戻し、出場機会を増やしていった。
・「メニエール病」という難病に苦しめられながらも、プロ6年目にはゴールデン・グラブ賞を獲得する活躍を見せた。
・引退してから21年後、野球監督としてふたたびプロ野球界に帰ってきた著者は、就任後5年目にチームを日本シリーズ制覇に導いた。