引きこもり生活中を襲った震災
自ら支援を求めて動いた30代男性
3月11日の東日本大震災をきっかけに、被災地の引きこもり男性が、自ら支援を求めて相談に訪れたケースがある。
宮城県のアパートで1人暮らしをしている30代男性は、これまで10年余りにわたって、引きこもり状態の生活を送ってきた。
彼は、親元を離れ、宮城県の大学に入学する。しかし、そこは、目標設定も何も考えないまま、「偏差値で見ると、君はこのレベルの大学」と輪切りにされて、通い続けただけの学校。大学3年になって、自分が目指していたものとは違う研究分野に入ったとき、すごく人が苦手なことに気づいた。
ずっと1人きりで研究してきた。そのうち、何の勉強をしているのかがわからなくなり、このままの状態で社会には出られないと思って、大学を辞める。
一体、何のために働くのか。仕事をする意義が見いだせなくて、就職ができない。大学を中退したことも、親には内緒だった。
その間、彼は実家から、月に十数万円の仕送りを受けていた。両親は、ともに自分たちのことで忙しくて、息子の状況については、まったく知らなかったのである。
彼は、お盆休みや年末年始になると、実家に帰宅。親から「どうしてるの?」と近況を聞かれると、「いま、就活中だ」「バイトをしている」などと言い逃れをしてきた。
とはいえ、自分の年齢も30歳を超え、これ以上ウソをつき続けることに、限界を感じていたという。
そんなとき、たまたま大震災に遭遇した。激しい揺れのため、部屋の中のありとあらゆるものが転倒した。
1人でアパートに引きこもっていることが怖くなって、「どこかに行かなくちゃ」と思った。
ネットで「引きこもり」というキーワードを検索してみた。その頃すでに、自分が引きこもりであることを認識していたのである。