報道の影響などで、ひきこもりというと「若年男性ばかり」というイメージを持つ人も多いだろう。だが、令和の時代では必ずしもそうではない。20代の若者だけでなく、配偶者やパートナー、子どもがいる人など、老若男女さまざまな人がひきこもっているのが現実だ。加えて、ひきこもり当事者の中でも、コロナ禍の到来によって家族関係や精神状態が好転した人・悪化した人が二極化している。当事者が多様化する中、どんな支援が適切なのか。(ジャーナリスト 池上正樹)
令和の時代は
誰もが「ひきこもり予備軍」である
「ひきこもり」というと、カーテンを閉めた部屋で膝を抱える若年男性像がメディアなどで描かれがちだ。「自分には関係ない世界の人だ」と無関心な人も多い。
しかし、実際はひきこもる要因も状況も1人1人違い、必ずしも若年男性ばかりではない。新型コロナウイルス感染拡大以降はますます、誰でもどの年代でもひきこもりになる可能性が高まっている。
そんな令和のひきこもりの実態が、6月に公表された東京都江戸川区の実数調査によって明らかになった。
江戸川区の調査は、2021年7月から今年2月にかけて実施。給与所得や介護、生活保護などの行政サービスを受給していない15歳以上の男女が住む約18万世帯に調査票を郵送した。未回答世帯には職員が訪問して回答の意思を確認し、回収率は57.4%だった。
調査票には「ご家庭で仕事や学校に行かず、家族以外の人との交流をほとんどしない方はいますか」といった質問が含まれており、「いる」と答えた人には、その人との続柄や性別・年齢などを記載してもらっている。
その結果、従来の内閣府などの「ひきこもり推計調査」では全体の2~3割しかいなかった女性が、今回の実数調査では51.4%と半数を超えた。見えにくかった「ひきこもり女性」が男性と同じくらい存在することがデータで示されたのだ。性別について「その他」と答えた人は0.4%だった。
ちなみに、過去に全世帯調査を行った秋田県藤里町では約3割、新潟県津南町では約4割が女性だった。
また、ひきこもり当事者が「配偶者・パートナー」と回答した人は18.4%、「父母」と答えた人は10.3%だった。「ひきこもり=独身者」のイメージを持つ人も多いかもしれないが、この結果からは、配偶者やパートナー、子どもを持つ人もひきこもりになっている事実が分かった。なお、「子ども」は34.4%、「兄弟姉妹」は4.6%だった。