「遺伝子の口に合う食事」が、あなたの人生を変える
それからの数か月、ぼくは、リチャードの劇的な好転に含まれていた意味について、何度も考えを巡らせた。世の中には、リチャードのような子供たちがもっといるはずだ。実際、何十倍も何百倍もいることだろう。そうした子供たちは、自分でも気づかずに、遺伝的にそぐわない食物を食べているのだ。その症状は、代謝の崖から彼らを突き落とすほど重篤なものではないけれども、きっと校長先生の部屋に呼びつけられるには十分なものだろう。
ぼくが通常診ている子供たちは、たいていの場合、非常に専門的な医療センターで治療を受けていることを考えると、プライマリーケアではどれだけの代謝疾患患者を見逃しているか、そしてまったく病院に足を運ばない患者もどれだけいるかと、心配せずにはいられない。
事実、何らかの認知機能障害があると診断された人、さらには自閉症スペクトラム障害の人の中に、見つかっていない代謝疾患があり、その治療を受けられていない人がどれだけいるかは定かではない。たとえばPKU(フェニルケトン尿症)の場合は、この遺伝病の理解が進むまで、この遺伝子を持つ子供たちの知的障害の原因が、治療を受けていない代謝疾患にあったという事実はわからなかった。
科学の進展につれてリチャードのようなケースの理解が進み、ひとりひとりの遺伝・代謝ニーズに沿った医学的介入と簡単な生活改善が、さらに多くの人たちの人生をよりよく変えられるように願っている。