経営 × 採用

500年企業・虎屋が社内に親族は「一人だけ」にする理由

多田洋祐 [ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長]
【第11回】 2017年5月12日
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「一子相伝」、虎屋の神髄

多田 「伝える」という意味では、虎屋さんはいわゆる「一子相伝」で経営を継承なさっているのも特徴的です。その中でも、社内に置く親族の方を「一人だけ」にするのはどうしてなのでしょうか?

黒川 現在社員は900人いますが、親類縁者は息子1人だけです。その虎屋のスタイルを私は良いシステムだと思っています。

 おそらく何代前かの先祖が考えたのですが、わかる限りでも明治時代に京都から東京へ出てきたのが12代目で、私は17代目ですから、この6世代にわたって続いています。

 そうすることで責任感と同時に、支えてくれている周りの人たちを頼らざるを得なくなる。それが見せかけではなく事実というのは、社員にとっても透明性があって良いのでしょう。「すべてを親類や兄弟だけで相談して決めている」といった状況にはなりませんから。

多田 ある意味では「虎屋の神髄」を伺えたと感じます。黒川社長はお父様が亡くなられたタイミングで社長に就任されましたが、生前にもあらゆる状況やデータを見て、会社経営の意思決定に伴走してらしたことと思います。そういった「伴走期間」が持つ意味をどのようにお考えですか。

黒川 トップが一人しかいない立場なら「私はこう思う」という話で済んでしまいますが、その時々で世代が異なる立場で考えると、結論も異なってくることを学びました。

 だから、元も子もない話なのですが、意味はそれほどないのかもしれません。息子にも言っていますが、年齢はもちろん、自分が育ってきた時代と今の時代は違います。基本的にはその時代の感覚で、その時代に合った人たちと作り上げていけば良いと思います。

 私は30代の時、なんでも「わかっていたつもり」だったのだと、40歳を過ぎてから気づきました。おこがましかったな、と。もちろんその時は最善を尽くしてやっていたことでの結果でしょうけれど、後々になってから、先輩方からかけられた言葉の意味を推し量れるようにもなりました。

 例えば、青年会議所に入っていたときに、東芝の社長・会長を歴任された土光敏夫さんやホンダの創業者、本田宗一郎さんといった方々とお話する機会があったのですが、「若い人をもっと信頼して任せなければいけない」と言われました。当時は心の中で「自分もそう思っている」と感じていましたが、後々になって振り返ると言葉だけではなく本当に任せてみたからこそ、「あの言葉の真意はこうだったのか」と気づくことができましたから。

多田 本日はありがとうございました。

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企業における「採用」を考える

多田洋祐 [ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長]

トップヘッドハンターとして活躍後、人事部長として株式会社ビズリーチ入社し、入社時に従業員30人だった組織を4年で500人に拡大させる。現在はキャリア事業のトップとして事業全体を統括し、「ダイレクト・リクルーティング」の日本での本格的な普及に努める。

 


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これまで数々の企業と対話を重ねてきた採用コンサルのプロが企業に横たわる経営課題をトップに直撃、その解決策について議論する。

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