課題は山積み
「充分な議論を」求める意味

 改正が見送られた項目の中でも特に議論されているのは「暴行・脅迫要件」の緩和についてだ。これまでの裁判例では、被害者が恐怖から硬直し、性交には同意していなかったことが認められたものの、目立った暴行・脅迫がなく、加害者が被害者の拒否の意思に気づかなかったことを理由に、「無罪」判決が出たケースがある。

 また、「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」は、暴行・脅迫がなくても上下関係などを巧みに利用した性暴力事件が実際に起きているが、この要件のために不起訴となるケースがあることも指摘している。イギリスなどでは暴行・脅迫は要件とされず、「同意に基づかない」性行為が処罰されることを挙げ、「同意」をキーワードとすることをこれまで繰り返し主張してきている。

 山本さんが会見で「充分な議論を」と話したのは、今回の改正案にも積み残された論点があるからだ。また、調査会では性暴力に関する専門家の不足や性教育の不足なども議題となったという。

 4月27日に衆議院議員会館で行われた別の会見では、お茶の水女子大学の戒能民江名誉教授が「性暴力が彼女あるいは彼の一生にどんな影響を持つのか。そのことに社会があまりにも関心を払っていない。被害者の支援の根拠となる法律がなく、財政的な困難、充分な活動ができない状態がある」と話した。支援現場での財政的な困難は、現場を取材すると実感することのひとつだ。

 性暴力・性犯罪の問題に限らないが、重大事件が起こってからでないと世間の関心が集まりづらい。その意味で、今回の性犯罪刑法改正についての審議は、普段事件が起こってからでないと取り上げられづらい性暴力について、メディアの報道が増える機会であることは間違いない。法案の審議入りに注目する人が増え、少しでも課題が共有されることを願いたい。