休暇を取ること自体への不安も大きい。第一に経済的な不安。休業期間中の賃金・賞与の取り扱いは、労使の自由な取り決めにゆだねられているため、完全に無給状態になってしまうこともありうる。その場合は、休業する前の賃金月額の最大40%が介護休業給付金として支給されるが、社会保険料の免除はない。

 しかたなく年次休暇や病欠でなんとかやりくりしようとする人が多いが、それも限度がある。

「そもそも、93日間休んだところでどうにもならない」という声も。脳溢血で倒れた場合は3ヵ月ほどで回復するケースもあるが、認知症やその他の病気ではその間に事態が収まるどころか悪化することもありうる。「最終的に介護休暇を取ったとしても、親の状態はよくならないので、職場に復帰しにくくなってしまうようです」(中島さん)

 最悪、仕事を失えば退職金を食いつぶしながら介護することになる。それも底をつけば、親の年金で生活することに――。中島さんによると、中には生活保護を受けながら介護を続けるケースも見られるそうだ。そうこうするうち、アルコールに依存する人、うつに陥ってしまう人もいる。

 世間ではまだまだ「親の介護は嫁の仕事」が大前提。そんな“嫁”が希少な存在となりつつある今、「シングル介護」をする人々は働くに働けない状態だ。だがこのままでは、そう遠くない将来、企業は相当数の貴重な人材を失ってしまうことになる。

「ただ今介護中」
カミングアウトして応援団を作れ!

 高齢化や晩婚化・非婚化が進む今の日本。一人っ子も多い。前述したように、近い将来、「シングル介護」はごく当たり前の現象になるだろう。だが、その現実に社会はまだ対応することができずにいるようだ。

 では、親にもしものことがあれば、私たちはどうすればいいのだろう。

 思い出されるのが、今回の震災で被災地が発信した「SOS」。病院の屋上に取り残された職員たちが上空を飛ぶヘリコプターにメッセージを送り、尊い人命が救われた。SNSを使って救援物資を募った医師もいた。自分から救いを求めれば道は開ける。シングル介護では周囲に介護していることを言えず、孤立してしまう息子や娘が多いが、積極的に地域や職場に助けを求めるべきだ、と中島さんは話す。