わが子の乳歯が抜けたら、昔は下の歯は屋根の上、上の歯は縁の下に投げ込む風習が一般的だった。現在では、住環境も変わってマンション住まいの人も増え、そのまま捨ててしまうケースが大半なのではないだろうか。ところが、すぐに捨てない方がいいのかもしれない。というのも、現在は再生医療の技術が進み、乳歯や親知らずが将来病気になった時の治療や、医療の研究に役立つ可能性が出てきたからだ。折しも、6月4日から「歯と口の健康週間」に入った。「抜けた歯」を用いた再生医療の可能性について取材してみた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

乳歯と親知らずは
再生医療に役立つ

「お母さん、歯抜けたよ」

 息子(7歳)が、抜けたばかりの小さな歯を見せてくれた。

「ホントだ、じゃあ下の歯だから屋根の上に投げようか。永久歯が、丈夫にすくすく生えてきますようにって」

「上の歯は縁の下なんだよね」

「そうよ」

「でもさ、マンションの子はどうするの。屋根も縁の下もないよね。屋上とか地下室があるマンションもあるよね。タワーマンションの子なんかすごいことになるよね。どうするの」

「うーーん……」