幹部人事と情報握り
強まった「官邸支配」

 小泉政権で、経済財政諮問会議に象徴される「首相主導」の予算作りの枠組みが作られ、民主党政権時代も事務次官会議に代わって閣僚委員会などが設置されるなど、政策決定の主導権を「官」から「政」に移す動きが進んできた。だが、内閣人事局が局長など審議官以上の幹部人事を一元管理し、実質的な人事権を握るようになると、官邸の力が一気に強まる。

「省内の評価と一致しない人が偉くなったり、役所の意向を無視したりするような掟破りの人事が増えた。上になればなるほど、官邸の顔色を見てやらざるを得ない。物言えば唇寒しという状況が決定的になった」と、ある官僚は話す。

 昨年の農林省の次官人事では、前任の次官が10ヵ月での退任となり、林野庁などの外局の長官を経験してから次官になる通例を破って、農協改革を担当していた本省の経営局長が抜擢された。この人事には、菅義偉官房長官の意向が働いたといわれている。

 厚生労働省でも、「エース」とされていた局長が転出。直接の原因は、年金局長時代、塩崎厚労相が執心したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用拡大に抵抗したから、との見方が強い。株価を維持し、アベノミクスを支えようとした厚労相に反対し、一方で消費税増税による「税と社会保障一体改革」に取り組んできたことが、政権の成長戦略重視の方針に沿わないと判断されたのではないか、というわけだ。

 前川・前文科事務次官が、「天下り斡旋問題」で自主退職を迫られたのも、加計への認可で逆らった文科省への見せしめ懲罰という面のほかに、前川氏がかつて小泉政権が進めた「三位一体改革」での義務教育費削減に抵抗した“前科”が背景にある、と見る向きもある。

 こうした各省庁の動向や、幹部の発言を細かく見ているのが菅官房長官。首相に持ち込まれる案件は、事前にすべて官房長官を通すが、菅氏はどの省庁がいま何で動いているかをつぶさに把握し、「この案件はまだ(首相に)上げるな」といった指示を事細かく出すという。

 官邸に情報が集まる仕組みが整備され、中には一部のメディアから、懇談や私的な会合での発言ややりとりを記した「メモ」も集められるという。菅氏自身も、「一晩に2階建て、3階建ての会合」をこなしているにもかかわらずだ。