むしろ、咬合調整は、一度削ったら、もう元には戻せない(天然歯の場合)上に、顎関節症よりも深刻な症状を引き起こす可能性があるため、「行わない方がいい」というのが、日本顎関節学会の見解だ。

 ではほかの治療法についてはどうか。

 同サイトには、次のような質問もある。

 Q2:あごの筋肉が痛いとき、スタビライゼーションスプリントは有効?

 答えは△といったところで、エビデンスは相当低い。

『スタビライゼーションスプリントを使った治療を受けてもいいでしょう。
 (GRADE 2C:弱い推奨 /" 低"の質のエビデンス)。
 咀嚼筋痛を主訴とする顎関節症患者において、適応症・治療目的・治療による害や負担・他治療の可能性も含めて十分なインフォームドコンセントを行うならば、上顎型スタビライゼーションスプリント治療を行っても良い。』

 ここで言っている「スプリント」とは、上の歯全体を覆う薄い透明なプラスチックの「マウスピース」のこと。香奈さんが歯医者で提案されたのもこの治療法だが、あまり頼りにはならないようだ。

 また、様々な慢性疾患(腰痛・アトピー性皮膚炎・体のバランスなど)にも効果があると謳う歯科医師も存在するが、「それを立証する確かな研究はありません」と断言している。

 日本顎関節学会の説明では、顎関節症は、進行する疾患ではなく、数日から数週間で症状が軽くなる疾患だということが、大規模な疫学調査の結果、明らかになっている。だが、歯科医療分野では、疾患の症状改善や根治療法と称して、十分な説明がなされないまま咬み合わせの調整など、症状を悪化させるリスクのある治療が行われる傾向があるという。

 なんだか怖い――。