どうして分かってくれないの?
泣きながら東京行きを宣言した妻
「来週、東京に行ってくるからね」
ある夜、香織さん(仮名・40歳)は、テレビのニュース番組に見入っている夫・雅樹さん(仮名・41歳)に宣言した。ちなみに彼らは札幌市在住だ。
「えっどうして?」
「病院に行くの」
「…どこか具合悪いの?」
わざわざ東京の病院に行くなんて、ただごとじゃないと、雅樹さんは不安そうに尋ねた。
「頭痛よ。名医に診てもらうことにしたの」
不機嫌そうに答える香織さん。
「なんだ、頭痛か。びっくりさせないでよ」
「なんだって何よ! 私がずっと苦しんでいること知ってるでしょ!」
「知ってるけどさ、わざわざ東京に行かなくてもいいじゃない。北海道だっていい先生はいるだろ。たかが…」
「たかが頭痛だって言うの? あなたいつもそう。私がどんなに苦しんでいるか、全然分かってくれないのね!」
一気に怒りを爆発させると、香織さんは泣きながら寝室に引っ込んでしまった。取りつく島もない。雅樹さんはぽつんとリビングに取り残された。
一方香織さんは気が納まらない。涙をポロポロこぼしながら、カッカしている。
実は、雅樹さんの反応は予想通りだった。「頭痛ごときで仕事を休み、家庭を放って、何万円もかけて東京の病院に行くなんて」賛成しないだろうことは分かっていたのだ。