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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーではインターネットバブルがすでに始まっている

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第47回】 2011年7月28日
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 Twitterは最近2億ドルの私募債を発行した。そのときの主たる投資家は当地の最有力VCのKleiner Perkins Caufield & Byersであったが、当社はTwitterの企業価値を37億ドルと算定した。その後Twitterは急速にアクセス数を増やしているので、70億ドルもおかしくないとなる。

 VCが投資先に株式を売却して利益を実現する前代未聞の動きも出ている。Twitterは近々8億ドルの増資を行うという。ここで調達した資金のうち半分を既存の投資家(VC)への配当と、従業員のストックオプションの一部買取に使う予定である。このことによって既存の投資家は今までの投資分を実現して利益を確定できるし、従業員も大きな現金を手にできる。

 もうひとつ例を挙げよう。VCのUnion Square VenturesはZingaに累計160万ドル投資しているが、その一部を458万ドルでZingaに売却している。Union Squareはこれによって元手の3倍の利益を上げている。売却後もZinga の発行済み株式の5.5%を所有しているので、上場後にたとえ株価がゼロになったとしても元手の3倍の利益は確定していることになる。

 ベンチャーの上場で誰が儲けているのか。一般的に言うとバブルのときに大儲けをするのはインサイダーだった。インサイダーとは、ベンチャー企業に投資するVC、VCに巨額の資金を預けて運用する機関投資家(たとえば年金基金)、ベンチャー企業にIPOさせて巨額の手数料を稼ぐ投資銀行(たとえばMorgan Stanley、Goldman Sachs)といったプロ集団だった。

 だが、VCと機関投資家は儲けたあと後遺症に苦しんだ。この国には、インサイダーは投資先のベンチャーが上場後180日間は手持ちの株式を市場で売却できないというSEC(証券取引委員会)規制がある。前回のバブルの時には、この規制のおかげで高値で持ち株を売却できずに損失をこうむったVCが多く出た。なぜならこうしたバブル株式は180日経つと株価が上場時の半値以下に値下がりするケースが多いからだ。

 VCはこうした反省にたってFacebook、Twitter、Zingaといった企業価値が異常に高くなった銘柄について一部持ち株の上場前売買を行って利益を確定させているのではないか。これはVCがバブルの崩壊を先読みして保身に回っているように見える。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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