テレビドラマ「半沢直樹」が40%を超える視聴率を記録して一躍人気番組になったと聞く。日本に出張したときに見てみた。元銀行員であった筆者にとっても無関心ではいられなかった。だが見た後に考えさせられた。
もし半沢直樹がアメリカのテレビ局で放映されたならば、人気番組となるだろうか?
アメリカ人の最初の反応は「不可解」だろう。そして「日本はアメリカと同じ民主主義国家であるのにずいぶん違う国だなあ」と思うだろう。無理もない。価値観と人事制度が大きく異なるからだ。
アメリカはもともと「個人主義(Individualism)」の国である。新大陸を開拓していくには個人が自分でリスクを取り、自分の人生を切り開いていく以外に道はなかった。会社と従業員の関係は対等な契約であると見る。その企業が気に入らなければ、とっとと辞めていく。自分を生かしてくれる企業に転職し、そこで新たな人生を切り開こうとする。米国では個人の幸福の追求が、集団での成功より上位の価値観に置かれる。
日本には「集団主義」の長い伝統があった。組織に忠誠を誓い、波風を立てずに秩序だって行動することを求められた。官庁、企業、軍隊はこれが原則だ。それが行き過ぎると戦前・戦中のように「組織のために命を捨てる」ところまで行く。戦後、民主主義国家になって大きく変わったが、我々の意識の中には古い価値観の片鱗が残っている。
人事の公正化を図るのはアメリカでは大きな関心事である。大企業では「360度評価」が一般化している。これは社員の評価をするのに、上からの一方的な評価ではなく、部下や同僚の評価も加えるのである。上だけの意見で評価を決めれば、好き嫌いが出やすいが、下、横の意見を徴すれば恣意性を排除できる。人事に民主化のプロセスを取り入れたのである。
筆者が80年代初頭に、ニューヨークのモルガン・スタンレー本社でトレーニーとして働いたときに、プロジェクトで一緒に働いていた上司を評価するアンケートが回ってきたのには驚いた。今から40年以上も前のことである。